創作の軌跡たどる 小林久三氏、没後10年企画展 古河

茨城新聞
2016年11月25日

古河市出身の推理小説家、小林久三氏の没後10年を記念した企画展が同市中央町3丁目の古河文学館で開かれている。映画助監督時代の資料や小説の草稿、文学賞受賞時の記念品など約135点を展示。生涯の創作活動の軌跡をたどることができ、ファンや市民の大きな注目を集めている。12月18日まで。

小林氏は1935年同市生まれ。東北大を卒業後、松竹の助監督として映画製作に従事した。後に小説家デビューし、74年に小説「暗黒告知」で第20回江戸川乱歩賞を受賞。2006年9月に死去した。

今回の企画展「没後10年 小林久三展~社会派ミステリーの鬼才」では、遺族から特別に借り受けた乱歩賞の記念品「シャーロック・ホームズ像」をはじめ、映画製作時代の台本類、使い込まれた愛用の国語辞典、「暗黒告知」の創作ノート、絶筆のエッセー「母のもんぺ」の草稿などの展示が主な見どころ。小説「むくろ草紙」「帝都発幻影列車」など、古河を舞台にした作品群の紹介コーナーも設けられている。

生前交流のあった同館学芸員の秋沢正之さん(43)は「映像的な描写力があり、文体で読ませる。弱者に向けられたまなざしが温かく、今も色あせない」と作品の魅力を語り、「故郷を愛した作家で古河を舞台にした作品が数多くある。市民に広く知ってほしい」と話している。

同館は同展に合わせ、古河が作品の舞台とされる小林氏の短編小説「王将の睡(ねむ)り」「火の鈴」「真夏の妖雪」の3編と、エッセイ「原風景のなかの古河」を収録した「小林久三傑作集」(A6判、351ページ)を刊行。1冊800円(税込み)で販売している。

問い合わせは同館(電)0280(21)1129

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