《北毛発 温泉百景》沢渡 昭和レトロな宿 玩具や看板 時間旅行

上毛新聞
2015年9月10日

子どものころ小銭を握りしめて向かった駄菓子屋、風景の一部となっていた商品の宣伝看板―。館内にレトロな雰囲気が漂うユニークな宿、沢渡温泉の山水荘もりや(中之条町上沢渡)。2代目の森谷哲夫さん(59)が集めたコレクションの一部が食事処の「昭和食堂」に飾られている。

もともとグリコのおまけや古銭、土器など小さなころからさまざまなものに興味を持つコレクターだった。学生時代、フォルクスワーゲン(VW)のミニカーに魅了された。大学卒業から間もなく家業に入った後、館内の一角にミニカーの展示スペースを設け、愛好家に喜ばれてきた。
20代、30代は旅行がてら県内外を歩き、ミニカーに加え懐かしの玩具、看板などを集めた。「個人商店を訪ね歩き、これはといったものを譲ってくれるよう交渉した」と振り返る。当時、純粋に趣味で集めていたものが、現在は旅館の看板の一つになっている。
その後、旅館改装時の2003年に「せっかくあるんだから」と、これまで集めてきた逸品を食堂に飾るようにした。ミニカーと合わせ、宿泊客は昭和レトロな雰囲気を味わい、和んでいる。
うわさを聞いた同好の士が訪ねてくると、話題は尽きない。昭和の匂いがする食堂で、コレクションに対する熱い思いを語り合うこともあるという。

「一浴玉の肌」と呼ばれ、温泉ファンから泉質が高い評価を受ける沢渡温泉。最大の武器である“お湯”とともに、ほかにはない館内の雰囲気づくりを通じて、特色あるおもてなしを続けていきたいと考えている。

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