測量機「くにかぜ」60年の歩み 企画展航空写真、歴代カメラも つくば

茨城新聞
2020年11月10日

地図の基になる航空写真や災害時の調査用写真を撮影する国土地理院の測量機「くにかぜ」の魅力を紹介する企画展が、つくば市北郷の同院地図と測量の科学館で開かれている。くにかぜは1960年に1号機が運航を始め、今年60周年を迎えた。現在は3号機が活躍。撮影した大型カメラや航空写真のフィルム、地図などを通じ、地図の成り立ちや災害時の対応を学ぶことができる。12月20日まで。入場無料。

企画展会場で空中写真撮影用の大型カメラを紹介する中島最郎さん=つくば市北郷

企画展「くにかぜが見た日本~空からの測量60年の歴史」は、測量用の軽飛行機くにかぜの3代にわたる活躍を紹介。空中写真撮影や、地震や水害、噴火といった災害時の情報収集の役割を展示した。

航空カメラは、ドイツ・ツァイス社やスイス・ウィルド社(現ライカ社)製の歴代の実物を並べた。初期型は重さが112キロ、レンズ直径20センチ、フィルムの幅も24センチある大型サイズ。撮影方法は、上空約3千メートルで一つのコースを飛ぶ際に、いずれの写真も前の写真と60%重なるように撮る。

これを現像のときに重ね合わせて1枚の空中写真に加工。さらに地図に仕上げる。南極・昭和基地でも撮影された。

くにかぜに乗員してきた同院主任指導官の中島最郎さん(60)は「雲があって失敗したり、降りて見たら何も写っておらず、撮り直しすることもあった。災害現場の緊急時にトラブルがあることもあり、苦労しながら撮った思い出がある」と笑顔で振り返る。

技術の進歩で航空レーザー、磁気測量用の計測も行い、近年では一眼レフカメラを載せたドローンによる撮影も進む。展示では、くにかぜの60年の歩みや、写真撮影と画像処理の方法、災害写真、昔と今を比較できる写真などもパネルで並べた。

中島さんは「1号機から3号機に代わるに従い、フィルムはデジタルになった。災害時の緊急撮影は早く撮って正しい情報を伝える役割がある。その時代時代に写しとってきた日本の国土の姿を見て、楽しんでもらえれば」と期待を込めた。毎週月曜休館。

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