水戸の梅まつり 紅白の彩り 17日開幕 清らかさとあでやかさ 偕楽園

茨城新聞
2018年2月14日

早春の到来を告げる「第122回水戸の梅まつり」が17日に開幕する。水戸市の偕楽園と弘道館をメイン会場に3月31日まで開かれる。梅独特の香り、白梅の清らかさ、紅梅のあでやかさ、枝ぶりが醸し出す格調の高さを感じることができる。竹林、クマザサが茂る陰の世界と千波湖を一望する陽の世界を堪能しよう。

偕楽園には100品種、3千本の梅がある。早咲き、中咲き、遅咲きに分かれ、開花期が正月前から彼岸すぎまで長期間にわたり観梅できるのが特徴。
偕楽園は1842年、水戸藩9代藩主の徳川斉昭が造園した。藩主だけでなく家臣や領民が心身を休めた。
兼六園(金沢市)、後楽園(岡山市)とともに三名園として全国に知られる。1904年の尋常小学読本で「地方で名高い公園」として記された。10年の高等小学校教科書で「日本ノ三公園」と紹介され、広く知れ渡った。
45年の水戸空襲で好文亭を全焼したが、58年に復元された。69年には奥御殿が落雷で全焼、72年に復元された。2011年の東日本大震災でも大きな被害を受けたが翌年に復旧した。

弘道館は斉昭がつくった藩校だ。藩政改革の一環として偕楽園とともに建設された。1841年に仮開館し57年に本開館した。
敷地面積は全国最大規模だった。現在の県立図書館、市立三の丸小、県三の丸庁舎の敷地も含まれていた。
教育内容も文武両道の理念の下、国学、儒学、医学、薬学、天文学、数学など現在の総合大学に当たるものだった。武芸では剣術、やり、柔術、兵学、鉄砲、馬術など多様な科目があった。最大時には約千人が学んだ。
斉昭は弘道館と偕楽園の関係を一張一弛(いっちょういっし)と表現した。孔子の言葉で、「厳しいだけでなく時には緩めて楽しませることも大切である」という教えだ。文武修行の場である弘道館に対し、偕楽園は心身を休める場とした。
68年に弘道館の戦いがあり、文館、武館、医学館、天文台などの施設が焼失してしまった。72年(明治5)年に学制が発布され、30年余で藩校の役割を終えた。
1945年の水戸空襲で鹿島神社、孔子廟、八卦堂が失われた(後に復旧)。正庁、至善堂、正門などは被害を免れた。東日本大震災でも甚大な被害を受けたが2014年に全面復旧した。
県の調査によると、創建当時の梅の木の植栽状況は不明で、大部分は戦後に植樹されたと推測されている。現在は60品種630本が植えられている。北側の梅林は、かつて文館が立っていた場所に当たる。

■夜・梅・祭 幻想的な光楽しむ 水府提灯並べ雅楽も
梅まつり期間中には、偕楽園や弘道館を照らすライトアップ、梅酒飲み比べ、納豆早食い大会など多彩な行事が繰り広げられる。主な行事を紹介する。

■ライトアップ
偕楽園は3月2日から21日まで、日没から午後9時まで「光の散歩道」と題して、園内を照らす。弘道館正門のライトアップは2日から21日まで、午後6~8時まで。
幻想的な夜の観梅を楽しむ「夜(よる)・梅(うめ)・祭(まつり)」が3日に弘道館、10日に偕楽園で開かれる。いずれも午後6時から9時まで。弘道館では水戸特産の水府提灯(ちょうちん)を並べ、雅楽の演奏が行われる。偕楽園では数千個のキャンドルディスプレイで彩る。ステージイベントがあり、屋台も出店する。
ほかに17日午後6時から9時まで、好文亭でプロジェクションマッピングが展開される。

■梅酒飲み比べ
全国の梅酒150種以上を飲み比べできる第6回全国梅酒まつりin水戸が2、3、4日、偕楽園に隣接する常磐神社で開かれる。毎年、多くの愛飲家でにぎわう。
2、3日は午前10時~午後4時、4日は同3時まで。30分間、好きなだけ飲むことができる。お気に入りの梅酒を購入することもできる。
当日券800円。700円の前売り券をセブンイレブン店舗やウェブで販売する。水戸観光コンベンション協会や水戸観光案内所でも取り扱う。待ち時間なしのファストパスは1200円。
会場内では、水戸市の無形民俗文化財に指定されている「大根むき花」の実演展示がある。大根を材料にボタン、アヤメなどの花を作る。

■納豆早食い
第17回水戸納豆早食い世界大会が17日午前10時~午後3時、偕楽園の吐玉泉下広場で開かれる。
大会は男女2部門で開かれる。予選は150人が納豆90グラム、ご飯310グラム(女性は210グラム)を食べ、上位10人が決勝に進む。机や体に納豆やご飯一粒でも付いていた場合は失格となるルール。
決勝はわらつと納豆5本分の350グラム、女性は3本分の210グラムに挑む。猛者たちが粘る納豆をかき込む。

■和服で楽しむ
和服姿でまつりを楽しむ「観梅着物Day」が4日午前10時~午後4時、偕楽園見晴広場で開かれる。午前10時と午後1時の2回、集合写真を撮影する予定。着物のレンタルが可能で3800円から受け付ける。
一方、ユネスコ無形文化遺産である結城紬(つむぎ)を着る「結城紬着心地体験」が3、4日午前10時から午後3時まで、常磐神社の社務所別館で行われる。着付けは、ゆうき着楽会が担当する。費用は3千円。

■東西梅林で六名木探し 陰と陽の世界体感
創設の趣意が書かれている「偕楽園記」には陰陽の調和の大切さが強調されている。偕楽園公園サポーター「散遊会」の阿部昇吉さん(72)に「陰から陽」のルートを案内してもらった。
創設当時は表門から入るのが通例だった。「表門は昨年ふき替えられたばかり。少し行くと一の木戸がある」。うっそうとした孟宗(もうそう)竹林と大杉森に囲まれる。「夕方の西日が差し込む風景も美しいよ」と陰の世界を紹介する。
崖から豊富な湧き水が流れ込む吐玉泉に向かう。「水温15度で冬は温かく感じる。反対に夏は冷たい。この石は4代目に当たる。東日本大震災の時も枯れなかった。水が豊富な街なので水都(みと)とも呼ばれる」。大理石は少しずつ溶けるので寿命があり、1987年に4基目が設置された。
JR常磐線の線路沿いをしばらく行くと南門が現れる。「当時は千波湖がここまで広がっていて、船着き場だった」
低地部分から階段を上ると見晴広場が目の前に広がり陽の世界へ入る。秋に萩まつりが開かれるが、冬は短く刈り取られている。「萩がないので、冬に来た人が広場を見るととても広く感じるようです」
崖の突端には仙奕台(せんえきだい)がある。「千波湖がよく見える。当時はここで囲碁や将棋、琴を楽しんだようだ。有事には大砲を置く考えだった」と創設者の斉昭の狙いを紹介した。「時間があれば隣接する常磐神社の義烈館を見学するとよい」と提案してくれた。
いよいよメインとなる「東西梅林」に入っていく。100品種あり長期間楽しめる。花の形、香り、色などが優れた「水戸の六名木」が34年に選定されている。何げなく散歩していたのでは見つけることはできない。「目印は六角形の竹垣で囲まれている木です。創建時からの老木は四角形の竹垣です」
幹がねじれたり、幹の中心部分が空洞になっていたりする梅がある。天然の造形美ともいえる幹だ。「水墨画やスケッチをする人たちに人気がある」
一の木戸まで戻り、陰と陽の世界を体感する約45分の散策が終わった。

偕楽園公園センターでは戦前の偕楽園の写真や絵はがき、吐玉泉の据え換え工事の様子をパネル展示している。

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