十六羅漢像の複製公開 重文の掛け軸16幅 茨城・龍ケ崎

茨城県龍ケ崎市内の寺が所蔵する重要文化財の掛け軸「絹本著色十六羅漢像(けんぽんちゃくしょくじゅうろくらかんぞう)」の複製が、同市馴馬町の市歴史民俗資料館で公開されている。実物は県立歴史館(同県水戸市)に寄託されており、常設展示もないことから、市教委が4年かけて精巧な複製画を作った。年1回公開しており、荘厳な雰囲気の羅漢像が一堂に並ぶ。公開は19日まで。
市教委によると、十六羅漢像は金龍寺(龍ケ崎市若柴町)が所蔵する。羅漢(阿羅漢)は悟りを得た高僧を指し、さまざまな場所に現れて仏の教えを説き人々を救う存在とされる。掛け軸の大きさは縦約97センチ、横約40センチ。全部で16幅あり、1幅に1人ずつ描かれている。衣装などに精密な模様が施されている点に特色がある。16幅全てがそろい保存状態も良かったことから、1917年に重文に指定された。
伝承では曹洞宗を開いた道元が中国で修行を積んで帰国する際、南宋の皇帝から贈られた。鎌倉の建長寺を経て鎌倉幕府の執権、北条氏に渡り、その後幕府を倒した新田義貞ゆかりの金龍寺に納められたとされる。表現技法から実際には鎌倉後期の日本で描かれたと考えられている。
県立歴史館は保存を重視する観点から常設展示をしていない。市民の目に触れる機会を増やすため、市教委は2017年度から20年度にかけて、専門の業者に委託して複製を制作した。実物を非接触のスキャナーで読み取り、絹の布に印刷。職人が手作業で金色を施した。16幅そろった展示は5回目。会場では複製作業を紹介したり、小学生向けの解説シートを用意したりしている。
市文化・生涯学習課の担当者は「細かな描き込みがなされ、カラフルな色で人の姿もリアリティーがある。茨城にこれだけの美術品を持つ文化があったことを知ってほしい」と話した。
入場無料。14日休館。各日午前9時~午後5時。