高校生、彝の芸術昇華 画風意識、人物や風景描く 茨城県近代美術館 水戸
茨城県近代美術館(同県水戸市千波町)の企画展「没後100年中村彝(つね)-アトリエから世界へ」(来年1月13日まで)に関連し、高校生が彝の魅力を発信するプロジェクトが進められている。取り組みの一つとして、同館1階のアートフォーラムでは高校生が彝の芸術を昇華させる形で描いた人物画や風景画、静物画など29点が展示されている。
同館は美術部などに所属する高校生の視点で展覧会や催しを盛り上げる高校生特派員事業を展開している。本年度は県内17高校から86人が参加。このうち49人が同展の関連事業に参加している。
これまで7、8月に、彝作品を複数で語り合う対話型鑑賞▽彝作品の描写を読み解く簡易模写▽創作の拠点となった東京・新宿のアトリエ訪問▽彝が手本とした西洋絵画の鑑賞-を行ってきた。
プロジェクトの目標の一つは、同展開催中に高校生特派員が対話型鑑賞などでファシリテーター(参加者から意見を引き出す進行役)になり、彝芸術の魅力を発信する。もう一つは、彝作品の鑑賞や模写を経て、自身の新たな表現に生かして作品を制作する。
今回の展示は目標の後者に位置付けられ、同館1階のアートフォーラムには、彝の画風を意識して描いた人物画や風景画、静物画など滋味深い作品を並べている。
県立勝田高2年、西田晴紀さんの「藤棚」は、彝アトリエの小窓から見える庭がモチーフ。窓枠を照らす木漏れ日や庭のぼやけた紫色の描写に、光の趣を巧みに表現した彝の筆致を感じる。
県立鉾田一高1年、関口喜久さんは「サイダーの瓶と果実の静物画」を出品。「彝の絵を見て作品への前向きな姿勢を感じた」と関口さん。画題として関心がある果物を丁寧に描いた。
県立水戸三高3年、五位渕絢佳さんの「友人(青)」は、彝の肖像画に見られる陰影を意識して制作。モデルとなった友人が持つイメージを踏まえ、深い青を基調に表現した。
同館の中田智則企画課長は「彝のプロジェクトに参加した高校生の皆さんは、一生の思い出になったはず。今後の制作に生かされるほか、美術から離れたとしても人生の大きな財産になるのでは」と話した。
高校生の作品展示は来年1月26日まで。