《食いこ》安重水産(茨城・鹿嶋市) 鮮度見極め釜揚げシラス

茨城新聞
2024年11月16日

茨城県沖は全国有数のシラス漁場。大洗から利根川河口に至る鹿島灘でもシラス漁が盛んだ。シラスはカタクチイワシ、マイワシなどイワシ類の稚魚だ。

「シラス干し」は茨城を代表する水産加工品で新鮮なシラスから作られる。ゆでたものが「釜揚げシラス」。それを2時間ほど干したものが「シラス干し」。さらにパラパラになるまで干したのが「ちりめんじゃこ」だ。

同県鹿嶋市武井釜の国道50号から路地を東に折れて400メートルの海岸沿いに、水産加工と卸、小売りを行う「安重水産」がある。茨城県水産製品品評会で農水大臣賞を受けた同社の加工技術は折り紙付きだ。

塩分濃度を調整した釜でゆで上げる

「シラス干しの品質、味は魚の良しあしで決まる」と断言するのはシラスの鮮度を見極めて仕入れ、「何を作るかを決める」同社の安重幸次さん(54)。県が進める「常陸乃国しらす」ブランド確立の中心人物だ。

その日水揚げされた「良いもののみを仕入れ、なければ手ぶらで帰ることもある。見て、手で触れば(鮮度は)分かる」という。一方で良いシラスが入ると「2~3トン買い付けるときもある」とうなずく。が、取材当日はお眼鏡にかなった鮮度のシラスは約600キロと少なかったため、安重さんの判断は「釜揚げ」加工。

ひらがなの「し」の形が新鮮さの証し

 

シラスは振動する網状のベルトコンベヤーを流れる。その過程で異物やシラス以外の魚がふるい落とされていく。続いて水路になった釜に流れ落ち、舞い踊るように流れながら、ゆでられる。

その間、安重さんはもうもうと湯気の立つ釜の傍らでシラスに目を凝らし「機械で取り切れなかったシラス以外の魚やあくは手作業で取る」と動き回る。

ゆで上がったシラスをせいろに広げ、粗熱を取ったらすぐに冷蔵庫へ。つややかな白色と「し」の字形にそろった形が高品質の証しだ。

ゆでたての釜揚げシラスを一口含むと、程よい塩加減とふわふわとした食感が口に広がり、生臭さはみじんもない。うーん、熱いご飯が欲しくなる。「日本一おいしいシラスを作っている。多くの人に食べてほしい」と安重さんの言葉に自信があふれる。

 ■お出かけ情報
▽茨城県鹿嶋市武井釜880(電)0299(69)2227
▽シラス干しが買えるのは同社直売所、鹿島灘海浜公園もぎたて市場、さんて旬菜館鉾田市特産品直売所、JAなめがたしおさい鹿嶋農産物直売所