大イワナ狙い源流域へ ばくっと一撃も中型27センチ 福島・阿武隈川

茨城新聞
2024年6月15日

なんとか完走できた奥久慈トレイル。足の痛みも和らいだ5月末、午後から福島県西郷村の阿武隈川源流域に向かった。この流域の渓流釣りは原発事故の影響でいまだヤマメは禁漁で、釣ってよいのはイワナのみだ。

車を国道289号甲子トンネル方面へ走らせ現場に着いたのは午後2時。先週来た時水温は13度で魚の反応はいまひとつだったが、きょうは雨の後、水量豊富で水温9度。

先週、さおを出した区間を通り過ぎ上流を目指した。自慢じゃないが私は川を歩くのが速い。あっという間に目標地点に到着。ここまで上流に詰めれば魚影も濃いはず-と期待を胸にさおを伸ばす。

当日のさおや仕掛けなど。クマ撃退スプレーも用意した

餌は同県白河市内の下流で採ったクロカワムシだ。まずは試しに流してみると小型のイワナが奪い合うように餌に群がる。魚影は濃い。

ゴルジュ帯(切り立った岩壁の峡谷)の中で釜状になった滝つぼを狙って仕掛けを投げ込むと、目印がなじむ前に「シュシュッ」と白い泡の中に引き込むアタリ。

「おお! いいね」。しっかりさおを曲げてくれたのは約25センチの良型だ。源流釣りではタモ網は邪魔になるので、かかった魚は岩場へずり上げるのが基本。なので糸も太めだ。

釣ったら写真を撮り、その場でリリースする主義の私は魚かごも持たない。釣り師が入渓した周辺は、魚を持ち帰る釣り師があらかた釣ってしまった場合が少なくないため、上流域まで足を延ばすことが多く、獲物は荷物になるからだ。

持ち帰り派が到達できない所まで上り詰めると魚影は濃くなっていく。この辺りまで来る釣り師はたいがいリリース派。何度も言うが「釣った魚ほど重い荷物はない」のだ。

この調子なら尺イワナもいけそうだ-と意気込んだがしかし、ヒットするイワナは測ったように同サイズ。これも源流釣りではよくあることで、魚影の濃い川は中型ぞろいでなかなか大物と巡り合えない。

大イワナのいる川は魚の数が少ない。イワナはある程度大きくなると主食の水生昆虫などでは足りず、共食いをする。小さい魚は食われてしまい、数が少なくなるという訳だ。

大イワナを求め、さらに奥へ分け入ると、大岩からの深そうな落ち込み。太ったガの羽を半分ちぎって針に刺し、水面に浮かべるやいなや、ばくっと一撃。さおを持つ手に力がこもる。釣れたのは中型、約27センチ。そろそろ引き揚げ時か。

クマ鈴、ホイッスル、撃退スプレー、なたなどクマ用心グッズは必携で、万が一を想定して対峙(たいじ)できる練習も大事である。(奔流倶楽部渓夢・上谷泰久)