波山、文様に込めた思い 茨城・筑西の2美術館で没後60年展
文化勲章を受章した茨城県筑西市出身の陶芸家、板谷波山(1872~1963年)の没後60年を記念した企画展「陶の詩人」が、同市内の板谷波山記念館、しもだて美術館で開かれている。動植物の多彩な文様に込められた波山の祈りや祝福、ユーモアといった思いがにじむ力作がそろう。企画展を担当する学芸員は「ロマンチックな波山の一面を見てほしい」と話している。
板谷波山記念館では「詠(うた)う陶芸家」を主題に28点を展示する。同館学芸員の橋本空樹さん(26)は「展示作品から見られる波山の物語を取り上げる」と語る。
「彩磁芭蕉蛙文(さいじばしょうかえるもん)花瓶」は、バショウの葉の上で2匹のカエルが並ぶ装飾が施され、その愛らしい姿が「会話しているようだ」と説明。ホタテ貝の文様が目を引く「帆立貝(ほたてがい)花瓶」については「海の世界にいざなわれるようなモチーフだ」と指摘した。
しもだて美術館には波山の初期から最晩年の24点がそろう。ヤツデや梅、金魚といった文様の陶磁器が並ぶほか、花瓶のデッサンなど波山の制作過程を垣間見ることができる。
「彩磁百合文(さいじゆりもん)花瓶」は、ユリの大輪とつぼみがかれんに描かれた力作だ。同館学芸員の篠木崇史さん(29)は、生命の連続を表した作品とした上で「命のきらめきのようなものが感じられる」と語った。
企画展の前期は両館とも5月7日まで。後期は板谷波山記念館が5月13日から7月2日、しもだて美術館が5月20日から7月2日。期間中はギャラリートークのほか、波山研究の第一人者で学習院大教授の荒川正明氏の特別トークもある。問い合わせは同記念館(電)0296(25)3830、同美術館(電)0296(23)1601。