上州の伝承 次代へ 民話、諺、謎掛け60年研究 酒井さん

上毛新聞
2016年8月24日

ㅤ民俗研究を60年以上にわたり続ける前橋市南町の酒井正保さんが、県内で口伝えされてきた民話などをまとめた「上州路の民話と諺(ことわざ)・謎掛けの民俗を訪ねて」を自費出版した。各地のお年寄りから集めた話を丹念に書き起こし、地域別にまとめた。「生活の中で育まれた伝承は上州人の精神文化の土台」とし、若い世代にも知ってほしいと願っている。

ㅤ悪事を許してくれた名主にタヌキが恩返しする「たぬき田の話」や、老いた母親を大切にした男に幸運が舞い込む「うば捨ての話」など民話46編、諺276編、謎掛け93編を掲載している。それぞれの話に、大切にされてきた道徳観や教訓が反映されているという。
ㅤ酒井さんは県内の短大で教えながら民謡や民話を研究。各地のお年寄りを訪ね、民話などを録音してきた。本書では音源を基に、方言やイントネーションも忠実につづっている。「上州の言葉は荒々しいと言われるが、お年寄りが孫に語り掛ける言葉は柔らかく温かい」と話す。
ㅤ上毛新聞社刊。1200円。A5判で141ページ。県内の主要書店で扱っている。