前衛パワーの軌跡 群馬NOMO企画展・近美 既成枠廃し表現模索

上毛新聞
2016年2月26日

交通標識やビルのシャッター、コーヒー豆の麻袋―。1960年代に活躍した美術家集団「群馬NOMOグループ」=豆字典=は既成の枠を取り払い、さまざまな素材や表現に挑んだ。同グループの軌跡をたどる企画展が県立近代美術館で開かれている。展示された86点は新たなものを生み出そうとするパワーにあふれ、今見ても新鮮。約50点の写真や資料とともに、地方から発信する意義を訴えかけている。
グループは県内の若手作家が集まり63年、前橋市の「やまだや画廊」を拠点に活動を始めた。抽象絵画を志す者同士が鍛え合う場から、次第に集団での前衛的な活動へと展開していった。
岐阜で開かれた「アンデパンダン・アート・フェスティバル」(65年8月)に100枚の「標識絵画」を出展して、注目された。標識は30センチ四方の建築床材を耐水顔料や蛍光塗料で加工した。同館学芸員の田中龍也さんは「前衛というと見る人が構えてしまいがちだが、標識絵画は美術を日常生活に溶けこませ、直接訴えることのできるものだった」と話す。
当時の標識は見つかっていないが、今回は関連企画として県内を拠点に活動し、グループを直接知らない若手作家12人に標識絵画の制作を依頼。2007年にかつてのメンバーが制作・展示した標識と合わせて約200点を紹介している。写真や立体など多様な表現を取り込んだ集団制作は見応えがあり、現代に十分通用することを示している。
県庁前通りの前橋ビル商店街のシャッターに絵を描くイベント(66年8月)は写真が残る。シャッターに向かうメンバーの姿から、半世紀前の前衛のエネルギーが伝わってくるようだ。
高崎の名曲茶房「あすなろ」では、店主の志賀郁夫(崔華國)さんの発案でコーヒーをテーマにした展覧会を開いた(67年7月)。絵画や彫刻、デザインのジャンルの枠を取り払い、新たな表現の可能性を求めた。
グループを通史的にまとめた企画展は初めて。美術界の東京一極集中を崩そうとする中で、メンバーが同時代のさまざまな表現を吸収し、新しいものに貪欲に取り組んだ姿が浮かび上がる。

【豆字典】
群馬NOMOグループ 沼田市で書店を経営していた画家、金子英彦さん(1924~2010年)が1962年に前橋駅前に「やまだや画廊」を開店。翌63年、最初の企画展として前橋在住の5人の若手作家を紹介したことで誕生した。グループ名は人類を意味する「Homo Sapiens(ホモサピエンス)」に否定の「Non(ノン)」を付けた言葉の略で、近代的な人間観を否定。英語の「No More(繰り返さない)」の意味も含むという。高崎や伊勢崎からも参加、69年までメンバーが入れ替わりながら13人が関わった。

【メモ】「群馬NOMOグループの全貌~1960年代、『変わったヤツら』の前衛美術」は3月21日まで。午前9時半~午後5時。月曜休館(3月21日は開館)。一般510円。問い合わせは同美術館(☎027・346・5560)へ。

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