益子焼 日本遺産認定 「かさましこ」笠間焼と共に 兄弟産地、地域に勢い文化庁評価

下野新聞
2020年6月22日

 文化庁は19日、地域の有形・無形文化財を観光振興や地域活性化につなげる本年度の「日本遺産」に22都道府県の21件を新たに認定した。本県からは益子町が茨城県笠間市と共同申請した「かさましこ ~兄弟産地が紡ぐ“焼き物語”~」が選ばれた。本県関係の認定は、2018年度の「大谷石文化」(宇都宮市)と「那須野が原開拓」(那須塩原、大田原、矢板、那須の4市町)以来となり、15年度の足利学校など「近世日本の教育遺産群」(足利、水戸など4市)を含め計4件となった。

 認定件数が15年度から累計で104件に上り、「20年度までに100件程度」とした目標に達したことなどから、文化庁は当面、認定を最後とし追加しない。

 日本遺産は、地域の魅力を発信する明確なテーマを設定した上で地元に根差した文化財を中核に据え、日本の文化・伝統を語る「ストーリー」を認定する。

 「かさましこ」は、笠間と益子がかつて宇都宮(うつのみや)氏の統治下にあり、18世紀中期に誕生した「兄」の笠間焼の流れを「弟」の益子焼がくみ取り、同じ文化圏の中で焼き物を通じてつながってきたという歴史的な経緯から物語を展開する。

 手仕事に宿る美を見いだす民芸運動を推進した益子焼中興の祖、人間国宝の濱田庄司(はまだしょうじ)や、「練上(ねりあげ)」という技法で笠間焼を芸術の域にまで高めた人間国宝の故松井康成(まついこうせい)さんなど、東日本屈指の両窯業地は時代に合った革新に挑み続け、現在は600人を超える陶芸家が活躍している。

 文化庁は「益子と笠間が連携して陶芸と地域の振興を進めていこうとする意欲を感じる。民芸運動をてこに、リノベーション(刷新)を図ってきた両地域の勢いを感じる」と評価した。

 大塚朋之(おおつかともゆき)益子町長は「今まで益子を築き上げてきてくれた全ての先人に感謝し、笠間市と共に日本遺産のブランドを活用していきたい」と喜びを語った。

 今回は43都道府県から69件の申請があった。本県関係はほかに3件あり、那須町、宇都宮市など県内5市町が初めて申請した「ミステリーワールド」は認定が見送られた。
 ●ストーリーを構成する益子町内の主な文化財

 (1)地蔵院本堂(国重要文化財)(2)宇都宮家の墓所(県史跡)(3)綱神社(国重要文化財)(4)西明寺(国重要文化財)(5)円通寺表門(国重要文化財)(6)山水土瓶(未指定、工芸品)(7)汽車土瓶(未指定、工芸品)(8)濱田庄司作品(町有形文化財)(9)益子参考館登り窯(町有形文化財)(10)旧濱田庄司邸母屋(町有形文化財)
波及効果に期待
 福田富一(ふくだとみかず)知事の話 大変誇りに思う。本県の魅力の向上はもとより地域の活性化などさまざまな波及効果が期待できる。魅力ある文化財群のさらなる保存・活用と積極的なPRに努めたい。

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