《まち里歩き 探検隊》湯の町 新たな魅力

上毛新聞
2019年1月21日

年間300万人を超える観光客が訪れる草津町の草津温泉。温泉文化が街並み形成にも反映され、湯畑周辺の再整備や湯煙を照らすライトアップなど観光客に旅の楽しみをプラスする開発が進む。伝統を生かしつつ、新たな魅力が生まれる温泉街を歩いた。

スタート地点は、東京・新宿駅などからの直通バスが乗り入れる草津温泉バスターミナル。1階に草津温泉観光協会の事務所と観光案内所(❶)があり、お薦めの観光スポットを紹介してくれる。


温泉街へ向かう途中、奈良時代の開創という光泉寺に立ち寄った(❷)。取材日が1月上旬だったこともあり、境内は初詣客でにぎわっていた。


お参りを終え、境内を後に長い階段を下ると町のシンボル、湯畑が見えてきた(❸)。7本の湯樋(ゆどい)があり、自然湧出する毎分4000リットルの湯が宿泊施設などへ運ばれている。2017年には国名勝にも指定され、温泉文化を伝える代表的なスポットとして国内外の観光客に知られている。毎日夜に実施されるライトアップは、若い世代を中心に人気を集めている。


周囲を散策していると、大正ロマン風のたたずまいが特徴の「熱乃湯(ねつのゆ)」(❹)があり、中へと足を踏み入れてみた。古くは共同浴場として親しまれていたが、現在は草津節に合わせて踊る「湯もみと踊り」ショーを見学できる観光施設となり、多くの家族連れが楽しんでいた。

湯畑周辺の散策を続けていると、湯滝前広場で、芸術家の岡本太郎さん(1911~96年)がデザインした「草」の文字を組み込んだ路面舗装を発見した(❺)。町企画創造課によると、岡本さんは湯畑を囲む石柵をデザインするなど町と縁があり、そうした歴史を訪れる人にも知ってもらおうと2年前に設置したという。


町のにぎわいを背に、「裏草津」との別名もある地蔵地区まで足を延ばした。同地区には、草津温泉の伝統的入浴法「時間湯」をする湯治客が今も絶えない共同浴場「地蔵の湯」(❻)がある。町が同地区を再開発し、かつて宿泊した記録が残る漫画家の作品をそろえた図書館が建てられることになった。新たな町の魅力の完成を楽しみに温泉街を後にした。

【ちょっと一息】御座之湯(草津町草津) レンタル浴衣で散策
「御座之湯」は明治時代まで草津にあったとされる共同浴場で、2013年に温泉施設として再建された。木造2階建ての温泉情緒あふれる外観が観光客の目を引き、「湯畑」「万代鉱」の二つの源泉が楽しめる。


近年力を入れるサービス「浴衣de散歩」(入浴付き2500円)は、若い女性客にも好評だ。好みの柄の浴衣や帯をレンタルし、温泉街を散策できることが魅力。田下竜二支配人は「泉質のいいお湯だけでなく、好きな浴衣に身を包んで温泉街全体を楽しんでほしい」と話す。
御座之湯の営業は3月まで午前8時~午後9時、4~11月は午前7時~午後9時。問い合わせは同施設(☎0279・88・9000)へ。

【メモ】温泉街を巡る約1.5キロのコース。距離は短いが坂が多く、ゆっくり歩いて50分ほどかかる。冬季は雪が多く、晴れていても凍結している場所がある。履き慣れた靴で、転倒に注意して散策を楽しんでほしい。

【本日の探検隊員】中之条支局 山岸章利記者 風評越え にぎわい
草津町を担当する記者になり、この春で丸3年になる。これまでの町内での取材を思い出しながら、ゆっくりと温泉街を歩いた。昨年は草津白根山の本白根山噴火による風評被害などで苦しい1年だった草津温泉。年初の湯畑周辺は観光客でにぎわっていた。さらなる魅力創出に向け、新たなスタートを切った温泉地に期待したい。