《上州百景 夜の顔》   

上毛新聞
2017年7月29日

坂東大橋

午後7時、伊勢崎市と埼玉県本庄市を結ぶ坂東大橋にライトがともると、橋にそびえる4本の柱が浮かび上がった。帰宅を急ぐ車、これから仕事に向かう車。夜の道を照らすヘッドライト、テールランプの光が帯となり、交錯する。
利根川に架かるトラス型鉄橋として1931年に開通。伊勢崎銘仙の輸送など伊勢崎市の産業発展を支えた。国道462号の道幅拡張の一環で2004年3月に開通した現在の新橋は、ハクチョウが飛び立つ姿をイメージしたデザインとされる。バックの闇が、光をまとった美しい橋の姿を際立たせている。(関口和弘)

 

【撮影ポイント】ISO200、6秒、絞り11。スローシャッターにし、夜の橋上に行き交う車のヘッドライト、テールランプが帯状になるようにした。

山あいの無人駅

静寂に包まれた山あいの無人駅。信号機の赤い光と電灯の明かりが闇を照らし、鉄路が浮かび上がる。
わたらせ渓谷鉄道神戸(ごうど)駅(みどり市東町)は、足尾鉄道時代の1912年に開業した。木造駅舎やホームなどが国の登録有形文化財に指定されている。時が止まったような夜のホームは、近くを流れる渡良瀬川の水音と、電灯に集まる虫のざわめきしか聞こえない。
午後10時13分。足尾行きの最終列車が出発すると、渓谷に響くエンジン音が遠のき、駅は眠りについた。
(綱島徹)

 

【撮影ポイント】ISO400、3分、絞り8。長時間露光でわずかな光を強調し、肉眼では見えない明るい情景に仕上げた。

ぐんま天文台

市街地の明かりは届かない。標高約880メートル、子持山中にある県立ぐんま天文台(高山村)の周辺は夏でも夜は肌寒い。澄んだ空のかなたで、夜が深まるほどにたくさんの星が姿を現す。
観測ドームが開き、150センチの反射望遠鏡が惑星や星雲の姿を驚くほど鮮明に捉える。観測普及研究員の田口光さん(43)は「150センチ望遠鏡は、直接肉眼でのぞけるものとしては世界最大級。もっと多くの県民に利用してほしい」と話した。
天空の北極星を中心に回る星。じっと眺めていると、星たちがダンスしているように見えてきた。
(石田貞之)

 

【撮影ポイント】ISO400、20秒、絞り2・8。「比較明合成」と呼ばれる手法で60枚の写真を重ね、星の日周運動を表現した。

レタスの収穫

午前2時半。投光器が昼間のように照らす昭和村糸井の畑で、10人がレタスを収穫する作業を黙々と続けている。
レタスは鮮度が命。夜間に作業するのは収穫後、強い日差しを受けて葉が早くしなびてしまうのを避けるためだ。「ザクッ、ザクッ」。伸びた人影の間から、包丁で茎を切る音が響き渡った。
畑を所有する石井孝路さん(39)らが汗を流し、収穫したのは2時間半ほどで7千個以上。レタスはJA利根沼田の集荷場へ運び、関東近郊に配送する。県内の小売店なら午前中に店頭へ並ぶことも。「ここのレタスは大きくて柔らかい。朝採れのみずみずしさを味わってほしい」。石井さんは胸を張った。
(大橋周平)

 

【撮影ポイント】ISO3200、5分の1秒、絞り6・3。投光器に照らされるレタスの葉の連なりが強調されるよう構図を意識。収穫作業のせわしなさを表現できるようにシャッタースピードにも配慮した。

群馬音楽センター

チェコ出身の世界的建築家、アントニン・レーモンド(1888~1976年)が設計した群馬音楽センター(高崎市高松町)。活動拠点とする群馬交響楽団の演奏会が開かれた夜、内部からの光が精緻な建物を浮かび上がらせていた。
正面は広いガラス張り。中のホワイエ(ロビー)を飾るフレスコ壁画「リズム」が淡いオレンジの光を受け、外からもくっきり見える。演奏会を聴き終え、出てきた人たちの表情は皆、満足そうだ。
建設から半世紀以上が経過した本県の音楽の殿堂。さらに時を刻み、今後も輝きを放ち続けるだろう。(宮崎浩治)
◇    ◇
「夜の顔」は今回で終わります。

【撮影ポイント】ISO2500、60分の1秒、絞り4、演奏が終わり、出てくる人たちがシルエットになるようにし、光と影を強調した。

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