《上州百景 夜の顔》山あいに“巨大城塞”  

上毛新聞
2017年7月21日

八ツ場ダム工事

山あいに日が沈み、工事現場に明るいライトがともると、巨大なコンクリートの壁が浮かび上がった。
国土交通省が進める八ツ場ダム(長野原町)の本体工事現場。ダムは1952年の計画発表から65年の歳月を経て、いよいよ完成が見えてきた。工事は24時間態勢で行われ、夜の姿を見ると、まるでコンクリートの城塞(じょうさい)を演出しているようだ。
団体向けに、毎月最終金曜に国交省が実施しているダム夜間工事見学会「プレミアムフライデー限定 ヤンバナイトツアー」が人気だ。問い合わせは八ツ場ダム工事事務所(☎0279・82・2317)へ。
(宮崎浩治)
◇   ◇
残したい風景、語り継ぎたい人や文化、伝統を追う「上州百景」。シリーズ3回目は「夜の顔」と題し、県内各地の夜景や、光が演出する景観にカメラを向ける。

【撮影ポイント】ISO400、1秒、絞り11。14ミリのワイドレンズを使用。山の稜線(りょうせん)が浮かび上がるよう薄暮の時間を狙った。

 

シリコーン工場

鮮やかなライトに照らされ、無機質なプラントがひときわ存在感を増す。
太田市西新町のモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン太田事業所。1974年に操業を始め、シリコーン製品の開発と製造を手掛けている。
24時間稼働する工場には約500人が勤務。3500種類もの製品を約30カ国に供給し、ものづくりのまち太田から、世界の産業を支えている。
(入山亘)

【撮影ポイント】ISO400、15秒、絞り16。許可を得て工場内で撮影。雨の日の夜、情緒的な雰囲気が増す瞬間を狙った。

 

ナイターレース

「いけいけー」。舟券を握りしめた人たちの威勢の良い声が飛ぶ。6色のボートが水しぶきを上げて眼前を通り過ぎた。水面に映ったナイターの照明が、ゆらゆら揺れた。
桐生競艇場(みどり市笠懸町阿左美)のナイターレースは1997年、全国の競艇場に先駆けて始まった。冬場は特に空っ風や寒さが厳しいが、仕事などで日中にレースを楽しめないファンから人気を集める。
レース開始から20年。競艇場の照明は、水上を駆けるボートと、一獲千金を夢見る人たちを照らし続ける。
(外処郷平)

【撮影ポイント】ISO250、10分の1秒、絞り8。レースのスピード感、場内の雰囲気が伝わるよう構図にも配慮した。

 

温泉宿

県内の四大温泉に数えられる中之条町の四万温泉。新湯川のほとりに立つ1694(元禄7)年創業の積善館(黒沢大二郎社長)は日が暮れると、レトロなシャンデリアのような輝きを周囲に放つ。
大正ロマンを感じさせる本館東側の「前新」。文化財としての価値が高い建物は1階部分の大浴場「元禄の湯」に大きなアーチ形の窓がある。窓から漏れる柔らかい光を見ていると時を忘れ、心を和ませてくれるようだ。
積善館は、映画「千と千尋の神隠し」のイメージモデルの一つといわれ、老若男女を問わず、人気の温泉宿として知られている。(石田貞之)

【撮影ポイント】ISO800、10秒、絞り5・6。空に青みが残る時間帯を選び奥行きを表現。長時間露光で波打つ川の流れを白く浮き上がらせた。

 

川のせせらぎを間近にしながら、アユの味を楽しめる簗(やな)。渋川市北橘町の落合簗では夜風を受けた客たちが、酒とともに夏の風物詩を堪能している。
土間でじりじりと焼かれるアユ。客が座るあずまやに香ばしさが広がり、食欲をそそる。店内の照明は最小限にとどまる。うまい肴(さかな)と酒を飲むのに、過度な明るさは必要ない。
利根川から吹き込む風が心地良い。毎年簗で夏の訪れを楽しむ常連の顔がある。ゆったりと流れる時間の中で、会話が弾む。譲れない、夏の夜の楽しみだ。
(山田浩之)

【撮影ポイント】ISO6400、40分の1秒、絞り5・6。あずまやでの団らんの表情と、利根川の双方が写る時間帯を狙い、適正露出を選択した。

 

 

 

 

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