身近な素材芸術に昇華 加藤アキラさん個展 半世紀の足跡たどる アーツ前橋で200点 表現の可能性探究

上毛新聞
2017年3月31日

アーツ前橋で開かれている。初期から最新作まで約200点を展示。半世紀にわたる加藤さんの足跡をたどるとともに、身の回りにある素材が美術作品に生まれ変わる様や、新たな表現の可能性を感じられる展覧会だ。

吹き抜けの展示室の床に、鮮やかな青い円形の作品「天と地の間で」(2004年発表、再制作)が据えられている。作品テーマは「空を植えよう」。青い部分は約9千枚のひし形のベニヤ板を割り箸で支え、“植えた”ものだ。

◎視点変え楽しむ
ゆるやかに角度を付けたベニヤ板は一様に斜め上を向く。正面や後ろ、真上と、角度によって違った表情を見せ、いろいろな視点で楽しめる。「集合体になると、自分の予想を超えた現象が起こる。それがたまらなく面白い」と加藤さん。
加藤さんは中学卒業後、自動車会社で整備工として勤務。23歳から創作を始め、1960年代に前橋で結成された前衛美術家集団「群馬NOMOグループ」で活躍した。66年に新人の登竜門「シェル美術賞展」で佳作に入るなど高く評価された。
整備工としての技術や使っている道具を作品に用いるのが制作スタイル。美術家で同グループの中心的な存在だった金子英彦さんの「日常の事物を芸術の域へ引き上げる」とのメッセージがきっかけだった。
身近な道具を取り入れた最初の作品は「REPORT」シリーズ(66~68年)。アルミ板を研磨した円を規則的に並べ、ワイヤブラシを円の中にあえて残すことで、研磨に用いた道具としての痕跡を伝えた。

◎地域に根ざし創作
70年から5年間の活動休止を経て、竹や皮など有機的な素材も扱うようになった。転機となったのは「地下系の狩」シリーズ(86~90年)。牛の生皮や銅を使って人間の存在や胎内を表現した。天井からつるしたり、壁から飛び出すように展示したダイナミックな作品からは生命の躍動が感じられる。
一般的な評価にこだわらず、地域に根ざして創作に打ち込んできた。素材や道具を加工して新たな作品を生み出すスタイルにちなみ、同展では自身を「ブリコルール」(仏語で器用人の意味)と表現する加藤さん。「創作活動は自己表現ではなく、そこから脱出したもの。あくまでも作品はそれ自体で自立した状態。見る人に自由に感じ取ってもらいたい」と話す。

【メモ】「加藤アキラ 孤高のブリコルール」は5月30日まで。午前11時~午後7時。水曜休館(5月3日は開館)。入場料一般500円。舞踊家の田中泯さんのダンス(4月23日、5月28日)などの関連イベントも開催。問い合わせは同館(☎027・230・1144)へ。

 

※写真=鮮やかな青い大きな円が特徴の「天と地の間で」

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