高崎市美術館と旧井上邸 6テーマで絵や彫刻

上毛新聞
2016年12月16日

高崎市美術館(同市八島町)と同館敷地内にある旧井上房一郎邸で1月21日まで、コレクション展「5つの部屋+I(アイ)」が開かれている。同市ゆかりの作家の絵画や彫刻など137点を、五つの展示室と旧井上邸で、それぞれテーマを設けて紹介。六つの展覧会を巡る気分で楽しめる。

さまざまな絵画や彫刻で、たびたびモチーフとされてきた「動物」が一つ目のテーマ。本県を代表する画家、山口薫や松本忠義さん、正田壤さんらの油彩画が並ぶ。動物好きだったという松本さんが描く動物は優しく温かみを感じさせる。

ピンクの極彩色から中間色、白黒と並ぶマリリン・モンローの顔。ポップアートの先駆者、アンディ・ウォーホルの版画が出迎える部屋は「顔」をテーマとしている。著名人やコミック、作家自身の「顔」に、それぞれの思想が投影されている。

抽象表現をテーマに掲げた「いろとかたちの部屋」では、高崎市出身の小倉ポオさんや鶴岡政男の作品が鑑賞できる。「それぞれの感じ方で自由に見てほしい」と、解説を極力省いている。

「木の部屋」では同市出身の木彫作家、深井隆さんが生み出す詩的な世界観を紹介している。金色の翼が生え、読みかけの本とリンゴが置かれたクスノキの椅子など、見る人に物語を想像させる作品に出合える。

最後は今年没後30年となる洋画家、福井良之助の孔版画を集めた部屋。孔版画とは謄写版のことで「ガリ版」とも呼ばれ、かつては学校などで印刷物を作るのによく使われていた。繊細な表現が難しいとされる孔版画ながら、緻密な線を描き色を重ねた福井の作品を鑑賞できる。

旧井上邸の庭園には斎木三男さんが制作した石彫が溶け込む。

同美術館学芸員の谷津淑恵さんは「六つの小さな企画展として見ると、新たな鑑賞の楽しみ方が見つかるかもしれません」と来館を呼び掛けている。

午前10時~午後6時(金曜のみ8時)。月曜休館。一般100円など。問い合わせは同館(☎027・324・6125)へ。

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