茨城県北芸術祭 作品を見に行く(2) 大子 墨汁の鏡面、特産漆活用

茨城新聞
2016年9月28日
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山々が連なり町の中央には久慈川が流れる大子町。ときどきわらぶき屋根が目に入り、暮らしの歴史を感じさせる。町内の展示作品は、穏やかな時間が流れる生活空間や豊かな自然に溶け込んでいる。

最初に訪ねたのは旧上岡小学校。木造校舎のきしむ階段を上がり講堂に入ると、床一面が漆黒に輝いている。参加アーティスト最高齢の田中信太郎さん(76)が手掛けた作品「沈黙の教会、あるいは沈黙の境界」だ。

床に広がる墨汁が鏡面のようになり、窓越しに見える竹林の緑やステージ上の黒い彫刻が反転して映りこむ。墨汁の奥に広がる空間に見とれた。

日立市で育ち国内外で活動してきた田中さん。「昔のたたずまいが残る大子で展示でき非常にうれしい。100年たった校舎の講堂で願ってもないシチュエーション。墨が約2カ月の間にどう変化していくか楽しみ」と話す。

さらに北に車で約5分、旧初原小学校に着いた。窓から日が差し込む2階奥の教室に、ほぼ等身大の黒いブタやヤギ、ロバの像がたたずむ。表面はつやのある無数の粒で覆われていて、粒の大きさは動物ごとに異なる。粒の正体は、なんとそれぞれの動物のふん。大子特産の漆を染み込ませたふんを素材に、それぞれの動物を形作っている。ちなみに、ふんの臭いはしない。

「cycling」と名付けた作品群。制作した東京芸大彫刻科研究助手の井原宏蕗さん(28)は、「人間は動物を生活に取り込んでいることを忘れている。ふんは嫌がられるが自然の循環の一つ。ふんを素材に元の体を形作ることで、動物の生きた痕跡に目を向けてほしい」と話す。

同町の全7会場には18作品が展示されている。袋田の滝では、観瀑台に向かうトンネルの天井に、久慈川の流れを表現したオブジェが光る。常陸大子駅前商店街は、東京芸大やタイの大学のチームによる作品が点在。商店街の十二所神社では、参道の百段階段を登るように金属の足形が連なる。創建1300年の同神社はアートがあふれる町を見守っていた。

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