《山里の養蚕郷 赤石・重伝建選定10年》景観維持 建物の統一感へ協力

上毛新聞
2016年9月9日

ㅤ古い養蚕農家が立ち並ぶ中之条町の赤岩地区は、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選定されて今年で10年を迎えた。地元は建造物の色や素材を限定し、除草や花植えに取り組むなど統一感のある景観維持に努める。素朴な風景が観光客に受けて観光スポットに成長したが、店舗や宿泊施設は少なくまだ活性化につながっていないのが現状だ。地元は観光ガイドや養蚕体験などの受け入れ態勢整備を急ぎ、今月10日には恒例のまつりで観光客を出迎える。赤岩地区の“もてなし”への取り組みを紹介する。

ㅤ8月下旬の日曜日の午前5時半。重伝建の中之条町赤岩地区に、地元住民の活気あふれる声と草刈り機の音が響いた。住民は6班に分かれ2時間にわたり、地区全体の草刈り作業に汗を流した。
ㅤ赤岩地区は景観維持へ住民を挙げて取り組む。草刈りは毎月1回、住民総出で行う恒例行事だ。参加した湯本滋さん(47)は「腰痛持ちにはきついよ」と額の汗をぬぐいながら、斜面に生い茂った草を次々と刈り取った。道端で作業していた武藤年男さん(79)は「ここは重伝建だから。観光客のために少しでもきれいになれば、と思ってやっている」と笑顔で話した。
ㅤ花で彩る取り組みも進む。有志がマリーゴールドを地区の中心地に植えたほか、町内の活性化グループ「ふるさと灯(あか)りの会」や中之条高生徒の協力で、花を植えたプランターを地区内の施設や家庭に置いた。

 
ㅤ建造物の修繕も景観維持に欠かせない。赤岩地区はこの10年間で56件の建物修理を行った。建て替え時は文化庁の指導で、できる限り過去の状態に戻すように決められており、住民は町や専門家から意見を聞きながら住居の色や素材を決める。
ㅤ屋根はかつてかやぶきか石置きだったが、実際の使い勝手を考慮し、こげ茶色のトタンぶきや瓦ぶきにして集落の雰囲気を統一している。
ㅤ壁面は土壁にする。新建材が使われている建物はリフォーム時にはがし、塗り直す。アルミサッシの窓は木製建具に変えるなど、徹底している。
ㅤ住民のこうした努力で、地区は古い町並みの雰囲気を取り戻し、観光客の心を癒やす集落になっている。

【重要伝統的建造物群】1975年の文化財保護法改正で制度化された。選定基準は①建造物群が意匠的に優秀②建造物群や地割りが旧態を保持③建造物群や周囲の環境が地域的特徴を持つ―など。市町村は条例で増改築の規制措置を定め保護する。国は指導、助言のほか、管理や修理、修景(伝統的建造物以外の建造物を周囲に調和させること)などに対して補助する。

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