信頼や裏切り軸に “走れメロス”29日公演 ひたちなか

茨城新聞
2016年5月11日

地域発の演劇の普及に取り組む演劇集団「MITO DRAMA STUDIO(MDSカンパニー)」の第4回公演「狂奔(はし)れメロス INNOCENT」が29日、ひたちなか市文化会館(同市青葉町)で開かれる。原作は太宰治の小説「走れメロス」。演出を手掛ける長谷川裕久さん(51)は「物語の大切な要素である信頼と裏切りを際立たせ、心の奥底に潜む生々しい部分を表現したい」と抱負を語る。

「MDSカンパニー」は、水戸芸術館で劇作家、演出家として長年活躍した長谷川さんが、フリー転向後の2012年10月に立ち上げた。演劇公演のほか、子どもを対象にしたワークショップや、中学校への訪問公演、朗読会など演劇の普及にも取り組む。

今公演「狂奔れメロス」のあらすじは、太宰の「走れメロス」を踏襲。主人公メロスは、暴君を殺そうとして捕らわれ、処刑を宣告される。彼は妹の結婚式に出るため、親友を人質に差し出し、猶予を願い出る。そして、祝儀と死の予感が入り交じる中、困難に満ちた長い道のりを走り続ける。

「狂奔れメロス」には、高校2年生から50代の団員14人が出演。過去に3度男役を演じ、今回はメロス役を務める辛(しん)真己(まき)さん(32)は「原作の枠にとらわれず、人物の肉体や息遣いをリアルに感じられる舞台を目指している」と意欲を示す。

演出の長谷川さんは「一般的にメロスは正義の人、彼を処刑しようとする王は悪玉とされている。ステレオタイプのイメージをいったん取り去り、役柄それぞれの事情をくみ取りながら、自分の解釈を加えた」と強調。「追い詰められた状況での信頼や裏切りといったものを軸に据えた。メロスの視点だけでなく、彼の帰りを待つ友と王の心のありようにも光を当ててみたい」と思いを話す。

舞台「狂奔れメロス INNOCENT」は29日午後3時開演。問い合わせは、ひたちなか市文化会館(電)029(275)1122

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