《まち歩き・里歩き》スタート 赤谷湖記念公園(みなかみ町相俣) 猿ゆかり、湯の街風情
今年のえと「さる」の名が付く場所を巡ろうと、みなかみ町の猿ケ京温泉を訪れた。三国街道沿いの湯治場として栄え、戦国武将の伝説や地域の昔話が多く残る。温泉はサルが見つけたというから、今年は特に縁起が良さそうだ。歴史の薫りが漂う温泉街を目指し、同町相俣の赤谷湖記念公園から歩いた。
公園は遊歩道が整備され、自然を感じながら散歩できる。娘2人と散策していた前橋市の萩原陽子さん(42)=写真=は「湖面に映る山並みは吸い込まれるように美しい」と感動している様子。湖南側の展望台からは、温泉街や新潟県境の山々が望める。
園内の広場にある県指定天然記念物「相俣のさかさザクラ」は、越後国(新潟県)の戦国武将、上杉謙信の伝説が残る。案内板によると、樹齢460年を超えるサクラは、謙信が関東に出兵した際、サクラのつえを逆さにして吉兆を占ったところ、芽吹いたという。「猿ケ京」の地名は、謙信が名付けたという民話もある。
国道17号を北上すると猿ケ京関所跡(現在は資料館)があり、この辺りから猿ケ京温泉街が広がる。約30軒の旅館や民宿が点在しており、相俣ダム建設による移設から60年を迎えた。さる年の今年、10カ所以上の宿泊施設で、さる年と60歳の人を対象にしたサービスを提供。各施設で宿泊料金の割引や料理の追加、土産物の贈呈などがある。
江戸時代から続く温泉旅館「旅籠(はたご)屋 丸一」は、和風の館内に書や絵画が並び美術館のような雰囲気。1871(明治4)年に造られた蔵を利用して建てた温泉「蔵の湯 林」がある。年男年女の宿泊者は特製せっけんがもらえる。
同旅館を経営する窪田金嘉さん(73)によると、温泉街は時代とともに、湯治場、農村、観光地として姿を変えてきたという。窪田さんは「農村の雰囲気が残る街並みは風情がある。今ある自然を生かした温泉地にしていきたい」と力を込める。
温泉街の道端で、石の受け皿から湯気が出ていた。自由に手を浸すことができる「手湯」が3カ所あり、源泉から引いた温泉を気軽に楽しめる。
「民話と紙芝居の家」は地域の“語り部”が常駐しており、間近で話を聞ける。紙芝居は昭和初期から現代までの2千点を収蔵、手に取ったり、スタッフによる実演を見ることができる。入館料は小中学生300円、一般500円。
旅の最後に一風呂浴びようと、日帰り温泉施設「まんてん星の湯」を訪れた。泉質はカルシウム・ナトリウム硫酸塩温泉で、冷え性や筋肉痛などに効果があるという。目下に広がる赤谷湖を眺めながら湯に漬かり、歩き疲れた体を癒やした。
【コースの特徴】
坂道の多い3キロ。スキーシーズンは交通量が増える。雪が降ったら路面が滑るので注意して歩きたい。
【寄り道したら】まんじゅう店「新月」 店先 湯気もうもう
趣のあるレトロ調の店先からもうもうと上がる白い湯気―。創業40年を超えるまんじゅう店「新月」は、白い皮の酒まんじゅう(1個110円)と茶色い皮の温泉まんじゅう(同80円)が看板商品だ。
酒まんじゅうは前日から発酵させた生地を使い、ふかふかとした食感。新潟県産玄米酒のこうじの香りを楽しめる。温泉まんじゅうは、北海道十勝産の小豆で作ったつぶあんを使用、甘さ控えめで「もう一つ」とつい手が出る。
2代目店主の角田英彦さん(47)と妻の孝子さん(51)は「家で食べても、食感を損なわないように工夫している」と話す。
午前8時~午後6時(売り切れ次第終了)。不定休。問い合わせは同店(☎0278・66・0087)へ。
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