時代雛名品、優雅に 茨城・笠間で展示 内裏雛や官女など100体

茨城新聞
2022年2月24日

享保雛(きょうほびな)や有職雛(ゆうそくびな)など、主に江戸中期から明治期に作られた由緒ある時代雛の名品が、茨城県笠間市石井の笠間公民館で展示されている。同市の國井暠一さん(76)が一昨年、市に寄贈した。展示は今年で2回目。金襴(きんらん)の衣装をまとった内裏雛をはじめ、五人囃子(ばやし)、三人官女、唐子など合わせて約100体が優雅な雰囲気を漂わせ、来場者を魅了している。

優雅な雰囲気を漂わせる時代雛の名品=笠間市石井の笠間公民館

 

國井さんは山形県河北町の出身。同町はかつて、最上川舟運によるベニバナの集散地として栄えた。酒田の港から上方へベニバナを運んだ北前船は、帰りの荷物として京の公家が手放した豪華な雛人形を買い取って運び、町の有力商人が競って購入した。同町の谷地(やち)地区では4月上旬、旧家に伝わる雛人形を公開する「谷地ひなまつり」が開かれ、多くの人でにぎわう。

京呉服の販売などを手掛けていた國井さんは、同町の顔とも言える時代雛に魅せられ、30年以上前から京都の骨董(こっとう)店やコレクターなどを訪ね、名品を収集。「谷地ひなまつり」でも披露していた。

一方、年齢を重ねるごとに冬場の暮らしが困難になり、70歳を過ぎて温暖な関東への移住を決意。2019年、縁あって笠間に引っ越した。集めた時代雛は「多くの人に見てもらい、地域おこしにつなげてほしい」と20年11月、市に寄贈した。

市によると、展示されているのは、内裏雛をはじめ、五人囃子、三人官女、唐子など45点で、計約100体。ほかに、茶道具、琴、囲碁将棋の盤など精巧に作られた雛道具も彩りを添えている。

このうち内裏雛は、金襴の衣装をまとった享保雛をはじめ、狩衣(かりぎぬ)、直衣(のうし)、衣冠(いかん)といった公家の装束を忠実に模して作られた有職雛、趣ある立雛などが一堂に並ぶ。時代ごとに顔立ちや衣装に違いが見られ、座り方も足を投げ出したり、あぐらをかいたりして興味深い。

國井さんは「古い雛人形には、織物、染色、工芸など昔の職人技が結集し、時代の精神性が込められている。本物の良さを感じてもらえれば」と来場を呼び掛けている。

3月3日まで。月曜休館。問い合わせは同館(電)0296(72)2100。