「修復」テーマに空間創作 現代美術家・竹村さん個展 水戸芸術館で開幕 茨城

茨城新聞
2026年8月4日

写真や絵の上に刺しゅうを施した薄布を重ね、重層的な記憶を描き出す現代美術家の竹村京さんの2000年代からの制作の軌跡をたどる大規模個展「竹村京:うごくせかい」が、茨城県水戸市五軒町の水戸芸術館で開かれている。戦争で爆撃された街を表現した初期の代表作をはじめ、大地震の被災地に寄り添い「修復」をテーマにした新作インスタレーション(空間表現)などを展示している。

竹村さんは1975年、東京都生まれ。東京芸術大大学院(油絵専攻)を修了後、ベルリン芸術大で現代アートを学ぶ。2015年からは群馬県高崎市を拠点に国内外に作品を発表し続けている。

制作手法の中で軸に据えているのが「絹糸で縫う」との行為。自然災害や戦争などで壊れてしまった物を絹糸でつなぎ止め、新たな光を与えようと試みている。食器などの壊れた日用品を布で包み、その輪郭に沿って刺しゅうを施す「修復」シリーズや、写真に布を重ねて縫い留める作品制作を展開している。

今回は戦争で爆撃された街の光景を題材にした大型の刺しゅう作品「There and Now,Kimi shini tamou koto nakare2」(06年)などの初期の代表作に加え、大地震を主題にした二つの新作インスタレーションが見どころとなっている。

このうち「修復されたN半島の屋根瓦」と題した作品は、能登半島地震で廃棄された大量の黒瓦に着目。オワンクラゲやピンクサンゴのDNAを持つ新素材「蛍光シルク」を用いて瓦を修復した。竹村さんは、能登の暮らしを長年守ってきた瓦のかけらを「人間の頭蓋骨」と見立て、そこにある一つ一つの命の重みを感じ取ってもらうことを主眼とした。

「『壊れる』という現象は誰にとっても苦痛なこと。『修復』という行為は過去に戻すことでなく、未来を見据えた前向きな営みだと捉えている」と竹村さん。「新作では震災の記憶をあえて形にし、言葉にできなかった思いを見つめ直すきっかけとしたい」と話した。

同展は10月12日まで。月曜休館。同館(電)029(227)8111。