《食いこ》武龍ワイナリー(茨城・常陸太田市)

■自社栽培ブドウでワイン
茨城県常陸太田市は阿武隈山地の南端に位置する水はけの良い丘陵地で、半世紀以上前から県内有数のブドウ産地。この地で生まれ育った山口景司さん(53)は、醸造所「武龍(ぶりゅう)ワイナリー」でワイン用ブドウの栽培とワインの醸造を手がける。
山口さんは市内で大正時代から続く酒卸問屋「合名会社山口」の4代目。近隣のブドウ園が高齢化や後継者不足によって耕作放棄されていく現状に、「産地を維持しなければ」と危機感が募った。「ものづくりをしてみたい」という思いも重なり、醸造所設立を決意。2016年に「常陸コミュニティデザイン」(同市)を立ち上げ、社員の成田楓さん(24)、武関拓也さん(40)と3人で22年からワインの仕込みを行う。

自ら栽培したブドウでワインを醸造する武関拓也さん、山口景司さん、成田楓さん(左から)=常陸太田市瑞竜町
約1.3ヘクタールの畑で、カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネなど7種約2500本のブドウを栽培する。生け垣のように狭い間隔で木を植えることで、「粒は小さく、糖度は高くなり、濃いワインができる」と山口さん。「皮と果肉の比率が大事で、皮がしっかりあると赤ワインで良い色と渋みが出る」と続ける。
8月下旬~10月上旬にかけて収穫したブドウは保冷庫で保管し、実と茎に分けてから赤ワインは皮ごと、白ワインは果肉を絞る。絞り出した果汁をタンクに流し、皮や種を入れて低温で数日間漬け込む「低温浸漬(しんせき)」を行うことで、豊かな香りを引き出す。約2週間発酵させた後、たるに移して乳酸菌発酵を約1カ月行い、鋭い酸味のリンゴ酸を乳酸に分解。まろやかな口当たりに仕上げる。

たるで乳酸菌発酵することで、まろやかな口当たりに仕上げる
自社栽培ブドウを使った「瑞龍」や農家から毎年約5トン買い取る規格外ブドウで仕込む「いばらきワイン」、県立常陸太田特別支援学校高等部の生徒たちと栽培から仕込みまで行う「あしたのわいん」やブドウジュースなど約20商品をそろえる。同県日立市、同県大子町の3農家が育てたリンゴのシードルも販売する。
今秋仕込んだワインは来春出荷予定。山口さんは「地域の恵みを吸い上げたおいしいワインを、県産の食材と一緒に楽しんで」と話す。ワイナリーで直売、ネット販売するほか、県内の飲食店やスーパーなどに卸している。
■お出かけ情報
▽茨城県常陸太田市瑞龍町1351の2
▽午前10時~午後4時
▽定休日は月-木曜(祝日の場合は営業)
▽(電)0294(33)6388
▽1~8、11、12月は見学可能(要予約)

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