赤水の軌跡や功績紹介 茨城・高萩で特別展 地図や墨跡55点 12月8日まで
茨城県高萩市出身の地理学者、長久保赤水(1717~1801年)の関連資料が並ぶ特別展「赤水の世界」が、同市高萩の市歴史民俗資料館で開かれている。赤水が制作した国内外の地図や自画像、自らの教えを記した墨跡、天文学書など貴重な資料55点を展示し、赤水の軌跡や功績が俯瞰(ふかん)できる。12月8日まで。
赤水は同市赤浜の農家に生まれ、下手綱にあった医者の鈴木玄淳の私塾で学問に励んだ。35歳ごろから地図の制作に取りかかり、1779年に日本で初めて経緯線の入った日本地図「改正日本輿地(よち)路程全図」(赤水図)を完成させた。同図は赤水没後も版を重ね、庶民に愛用された。赤水図を含む関係資料693点は2020年に国の重要文化財に指定されている。
特別展では初版から第4版までの赤水図と同図の原図となった「改製日本分里図」を展示。国の色分けの変化、海路や地名の有無など地図の比較が楽しめるとともに地図制作への熱意がうかがえる。また、海外から伝わってきた地図を基に赤水が千島列島を書き加えるなどした世界地図なども展示され、赤水の知見の深さを再確認できる。
さらに、地図制作に天文学の知識を活用したことから、赤水は天文学者としての一面も持ち合わせており、自身の著作で回転式星座盤付きの天文学書「天象管闚鈔(てんしょうかんきしょう)」なども並ぶ。また、赤水はベトナムに漂流した水戸藩内の船員が清国の商船に乗り、長崎に帰ってきた際、水戸藩の命令により現地へ向かった。船員から聞き取った漂流体験やベトナムの文化などをまとめた「安南国漂流物語」が、流されたルートの図解とともに公開されている。
このほか、自身が描いた自画像や子孫に殖産や倹約を諭す遺訓、読書を勧める「勧学」と題した書物、農民が苦しむ年貢の取り立て制度の改善を水戸藩主に具申した「農民疾苦」も展示され、赤水の博学多才さや生きざまを伝える。
同館の瓦吹堅館長は「いろいろな顔を持っている赤水の生きざまが感じられる。より広く赤水を知ることができるので、展示を見てほしい」と来場を呼びかけた。月曜休館。
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