物語生む「ATM」展示 現代美術家・田村さん AI活用新作 水戸芸術館 茨城

茨城新聞
2024年11月12日

現代美術家、田村友一郎さん(47)による個展「田村友一郎 ATM」が、茨城県水戸市五軒町の水戸芸術館で開かれている。田村さんは写真や映像、インスタレーション、舞台など、さまざまな表現手段による作品を発表し、国内外で活躍してきた。今回はこれまで自身が手がけた創作の回顧と再構築をテーマとし、新たな物語を生む生成AI(人工知能)を活用した新作「ATM」などが大きな見どころとなっている。

田村さんは1977年、富山県生まれ。京都府在住。その土地の歴史や身近な話題などさまざまな着想源を基に、虚実入り交じった物語を構築して新たな解釈を生み出し、現代へとつなげていく作風が特長だ。

会場には、ドイツの自動車メーカー「BMW」の車両、旅客船タイタニック号の遭難信号「SOS」を巡る海図など、何らかのアルファベット3文字を連想させるさまざまな作品が並べられている。これまでの創作の軌跡の回顧を兼ねるもので、それぞれの3文字にどのような意味を見いだすかは、鑑賞者の思索に委ねられている。

作品について解説する田村友一郎さん=水戸市五軒町

新作「ATM」は冒頭の展示室に置かれている。同館の英語表記「Art Tower Mito」の略称から着想を得たとし、外観は現金自動預払機(ATM)を思わせる。鑑賞者がATMのパネルを操作し好きなアルファベット3文字を入力すると、その文字に応じた短い物語の短文が、日本語と英語の2言語で、紙のレシートのような形で出力される。その短文は、田村さん自身がこれまでの作品で使った膨大な言葉を、生成AIが組み合わせたもの。機械的に唯一無二の新しいストーリーを生み出そうする試みだ。

田村さんの個展としては過去最大規模になる。田村さんは「気負わず、まずはATMを触ってみてほしい。自分の運命を試すおみくじのような感覚でストーリーに触れられるはず」と話している。

同展は来年1月26日まで。月曜休館。午前10時から午後6時。