群馬県富岡市で愛された名物カレーが復活 「夫も生きていれば」 飲食店主らレシピ再現、31日に100食販売
昨年閉店した群馬県富岡市富岡の和洋レストラン「新洋亭」の看板メニューだったカレーが31日、キッチンカーで復活する。多くのファンに愛された名店の味を残そうと、市内の飲食店主らが協力し、レシピを再現した。31日午前11時半から市役所前の広場で販売する。
◎惜しまれ閉店 富岡の「新洋亭」
新洋亭は1925(大正14)年に創業し、昔ながらの味わいが残るカツ丼やカレーが名物だった。3代目の故井上邦男さん(享年75)と、妻のかず子さん(75)が店の看板を守ってきたが、昨年9月末、邦男さんの体調不良のために惜しまれながらのれんを下ろした。邦男さんは今年9月に亡くなった。
閉店後も地元からは店の復活を求める声が上がっていた。そこで立ち上がったのが、地方事業者の課題を解決する「まちのわーくす」(高崎市)の永田啓介さん(34)だった。
永田さんは富岡市富岡のイタリア料理店「イル・ピーノ」店主の馬場俊人さん(51)に協力を依頼。「イタリア料理店で新洋亭のメニューは提供しにくい。それでも、誰かやりたい人が現れた時にレシピを引き継げたら」(馬場さん)と、キッチンカーの形式で店の味を復活させることが決まった。
◎レシピ再現「ありがたい」
新洋亭には正確なレシピが残っていなかった。店でカレーを担当していた井上さん夫妻の三女、純子さん(46)が当時の調理器具を使いながら記憶をたどり、イル・ピーノの女性スッタフ2人と試行錯誤を重ねた。かず子さんの助言も受け、7月ごろから約2カ月かけて店の味に近いカレーの再現に成功した。
31日はかず子さんも駆けつけ、約1年ぶりに店頭に立つ。かず子さんは「自分たちが受け継いできた富岡の味を、残そうとしてくれるのがありがたい」と感謝する。レシピ再現の話を聞いた邦男さんは生前、「好きにすればいいさ」と話したといい、「ぶっきらぼうな言い方だったが、夫も生きていれば食べに来たはず」と目を細めた。
カレー800円、カツカレー1100円で販売。提供は計約100食で、約50食は予約済みになっている。事前予約はイル・ピーノ(☎0274-63-0633)へ。