伝説のソプラノ歌手に光 雨情没後80周年音楽会 茨城・水戸で25年2月16日
「七つの子」「シャボン玉」などで知られる茨城県北茨城市出身の童謡詩人、野口雨情の没後80周年記念コンサートが来年2月16日、同県水戸市千波町のザ・ヒロサワ・シティ会館で開かれる。演目の目玉として、雨情と同郷で昭和初期に活躍した「伝説のソプラノ歌手」ベルトラメリ・能子(よしこ)(1903~73年)に光を当てる。雨情作品とともに、能子がリサイタルで歌った曲をよみがえらせ、時代を超えた2人の生きざまに思いをはせる。
能子は、大津町(現在の北茨城市大津町)の名士、鐵(てつ)家の長女として生まれた。東京音楽学校(現東京芸術大)で声楽の基礎を学び、22年から19歳でイタリアに長期留学した。25年にローマ在住の日本人の家で20歳以上離れたイタリアの文豪、アントニオ・ベルトラメリと出会い、2年後に結婚。アントニオが死去した後、31年に帰国してからはソプラノ歌手として各地で独唱会などを開いた。
茨城県では同年4月25日に、県立水戸高等女学校(現県立水戸二高)の講堂で慈善を目的とする独唱会を開催。地方紙「いはらき」は「茨城県が生んだ世界的女流歌手」と紹介し、昼夜2回行われた独唱会の様子を「立錐の余地なき盛況」「満堂の紳士淑女ただ妙曲に陶酔す」と報じた。
32年に能子は再びイタリアに渡り、35年に帰国。戦後は神奈川県鎌倉市に住み、東京都内の音大で後進の指導に当たった。
コンサートは「野口雨情の心をうたいつぐ会」(小田部卓会長)が主催。出演は雨情の実孫で野口雨情資料館長の野口不二子さん、バリトンの高橋正典さん、ソプラノの森田妃加允(ひかる)さん=水戸市出身。
2部構成で、第1部は雨情に大きな影響を与えた恩師で小説家の坪内逍遙の手紙を映像で紹介。不二子さんと高橋さんの語りとともに、高橋さんと森田さんが「雨降りお月=雲の蔭」「赤い靴」「捨てた葱」などの雨情作品を歌い上げる。
第2部は北茨城が生んだ雨情と能子の生きざまについて、不二子さんと高橋さんが解説。さらに高橋さんと森田さんが、「オペラ『椿姫』より乾杯の歌」「からたちの花」など能子がリサイタルで実際に歌った曲を演奏する。
同会事務局は「時代を超えて歌い継がれる雨情とともに、同郷のソプラノ歌手の能子に思いをはせ、人生をいかに生きるかを考える機会としたい」と話す。
コンサートは午後2時開演。チケットは全席指定3000円。17日に受け付け開始。申し込みは同館(電)029(241)1166。