水戸発ウイスキー完成 60年ぶり製造 3種類、10月から販売 明利酒類 茨城

茨城新聞
2024年9月8日

清酒「副将軍」で知られる酒造会社、明利酒類(茨城県水戸市元吉田町)がウイスキー製造販売に本格的に乗り出した。約60年前に製造を中断したが、2022年に再開し、「高藏(たかぞう)」シリーズとして3種類を完成させた。ジャパンウイスキーは世界的にも人気で、国内でも製造会社が増えている。同社は「水戸発のウイスキー」としてアピールする。販売は10月1日から。

同社は1952年にウイスキー製造を始めた。だが、10年後の62年に火災で工場を喪失し、製造を断念していた。中断した約60年の間、日本酒分野では醸造に欠かせない酵母の開発・研究を進め、独自の酵母を全国240社に提供するまでになった。ほかに焼酎やウオッカ、ジンなど蒸留技術も高めてきた。先人の思いを受け継ぎ、ウイスキーの製造を2年前に再開した。

社内の技術者を担当に据え、全国の蒸留所を巡り半年かけて技術を学んだ。専用の蒸留所を敷地内に建設。フルーティーな味を目指し、試行錯誤を重ねた。再開当初と比べ酵母の量を3倍使い、発酵期間を倍にしたことで、納得がいく「蒸留所らしさ」を表現した。さらに、同社人気商品の「百年梅酒」を造るたるなどで熟成し、個性を出した。

ウイスキー「高藏」のラベルに使用した書を揮毫した吉澤鐵之さん(右から2人目)と明利酒類の関係者ら=水戸市元吉田町

「高藏」は同社の初代醸造家の名前にちなむ。完成した3種類のうち、唯一漢字のシリーズ名を冠した「高藏 REBORN」は、同社で発酵、蒸留、熟成全てを手がけた原酒だけを使う。百年梅酒が染み込んだ「プラムワイン樽(たる)」で熟成した原酒中心で、限定5730本を製造し、200ミリリットル入り3200円(税別)。味わいはレーズンのような甘み、スパイシーさが特徴。1年という短い熟成期間ながら、同社の加藤喬大常務は「果実味あふれるフルーティーさを楽しんでほしい」と自信をのぞかせる。

ラベルには茨城書道美術振興会理事長を務める同市の書家、吉澤鐵之さんが揮毫(きごう)した作品を使用。吉澤さんが書いた複数枚の中から、かつてウイスキー製造を行っていた先代の字に似ている作品が選ばれたという。

アルファベット表記の「TAKAZO REBORN」は、プラムワイン樽熟成のボトル(700ミリリットル入り同4500円)とミズナラ樽熟成のボトル(700ミリリットル入り同6000円)の2種類。

加藤常務は「(人間に例えれば)まだ子どものウイスキー。皆さんに原酒の成長を楽しんでいただきたい」と話した。