茨城・牛久の住井すゑ文学館 東海大学院生が解説文 資料調査、成果を紹介

茨城新聞
2024年3月29日

長編小説「橋のない川」で知られる作家、住井すゑさん(1902~97年)の業績を紹介する茨城県牛久市城中町の住井すゑ文学館で、企画展「私の一点 牛久市・東海大との共同調査より」が開かれている。同市と共同で調査している東海大の大学院生が1点ずつ資料を選び、それぞれに解説文を添えた。

同文学館では、東海大文学部日本文学科の安達原達晴講師と連携し、22年度から3年間で所蔵資料を調査している。安達原さんの研究室に所属する大学院生らは、手付かずで保管されていた原稿用紙やはがき、パンフレットといった資料を整理し、目録を作る作業に取り組んでいる。

書斎などを改修した展示棟には、住井さんが使っていた黒い手帳や夫の犬田卯さんが残した構想メモ、出版社から届いたゲラなどが置かれ、学生一人一人による紹介文を並べた。

住井さんが雑多なメモを走り書きした手帳には、被差別部落問題に触れた島崎藤村の代表作「破戒」の題名が書き留められていた。手帳を取り扱った学生は「橋のない川」との共通点を指摘し「住井すゑの息吹が感じられる」と感慨を記している。

もう一つの展示会場「抱樸舎(ほうぼくしゃ)」では、住井さんの作品を基に作曲された交響詩「橋のない川」のパンフレットを展示し、音楽と朗読を流している。資料を選んだ学生は「音楽と文学をつなげ、想像の世界の自由さ・面白さを実際に体験して」と紹介した。

市文化芸術課の担当者は「地道な作業にスポットライトを当てた。若い研究者たちの成果を紹介できれば」と話している。

会期は5月26日まで。午前9時~午後4時半(最終入館は同4時)。月曜休館。問い合わせは同課(電)029(874)3121。