笑い広がる公演150回 茨城・水戸のみやぎん寄席1年 席亭「胸張れる存在に」
茨城県水戸市の宮下銀座商店街にある寄席小屋「水戸みやぎん寄席」が、オープンから1周年を迎える。ほぼ毎週末に開催し、今年8月末までの公演は150回、延べ3654人を笑いに包んだ。課題は知名度向上とファンの定着だが、席亭の内藤学さん(63)は「『水戸には寄席がある』と胸を張れる存在に育て上げたい」と意欲的だ。
みやぎん寄席は昨年9月10日、内藤さんら水戸商工会議所の有志が、にぎわいの拠点をJR水戸駅北口につくろうとオープンさせた。以前は倉庫だった4階建てビルの一角を改装し、1階に最大48席の演芸場、2階に楽屋を設置。開設に当たっては、寄席にも定期的に出演している落語協会理事の古今亭菊之丞さんの監修を受けた。
今月2日には、落語家・柳家さん花さんの高座があり、さん花さんは、開場を告げる「一番太鼓」を打ち鳴らし、「お客さんにどんどん来てほしいって」と客席の笑いを誘う場面が見られた。
演芸場客席の最前列は、手を伸ばせば演者に届く距離となっており、内藤さんは「この近さ、噺(はなし)家との一体感がここの売り」と語った。
各公演には、落語家として一人前とされる「真打ち」だけでなく、「二ツ目」と呼ばれる若手落語家も出演。内藤さんによると、オープン後には、2~3カ月ごとに出演する特定の噺家を目当てにするリピーターが現れたり、公演後に観客が近くの飲食店へ繰り出したりするなど、商店街への波及効果も出始めているという。
地方都市では継続するのが難しいとされる常設寄席。みやぎん寄席も、開設当初は満席が相次いだものの、数カ月後には客足が落ち着き、3席しか埋まらない公演もあったという。
来場者の掘り起こしに向け、みやぎん寄席は今後、約120いるという法人・個人会員に対し、割引をはじめ、噺家と会食できるなどの特典を用意し、団体客来場を促す構想を練る。また、11月には子ども向けの「出前寄席」を開き、ファン層拡大を図りたい考えだ。
無類の落語好きという内藤さんは、これまでの関係者の支援に謝意を示すとともに「歴史ある水戸だからこそ寄席が似合う。『みやぎん寄席、楽しかった』という声が少しずつ広がってほしい」と語った。