「魔女商会」や「ルルとララ」の心込めた原画を紹介…あんびるやすこさん展 県立土屋文明記念文学館(群馬・高崎市)
群馬県前橋市出身の児童文学作家、あんびるやすこさんの作品を紹介する企画展が9月3日まで、高崎市の県立土屋文明記念文学館で開かれている。作家生活を始めて間もない頃の作品、長年続く人気シリーズの原画やスケッチ、ラフ原稿など約150点を紹介している。
■絵本作家のあんびるやすこさん(前橋市出身) 時代と国を超える共感 モンゴメリ著「赤毛のアン」村岡花子訳(新潮文庫)《文学の森》
あんびるさんは1961年生まれ。前橋市立女子高(現市立前橋高)―東海大文学部日本文学科卒。テレビアニメの美術設定や玩具の企画デザインなどの仕事を経て、87年に作家デビューした。
同展は数ある作品の中で、現在まで制作を続ける4作品シリーズを全て取り上げている。「なんでも魔女商会」は、今月に最新の第29巻を出版したばかりで、11月に刊行20周年を迎える。洋服の直しを請け負う魔女のシルクと、人間の女の子、ナナが、客が寄せるさまざまな注文に応えていく物語だ。
シルクが手がける洋服のデザイン画が描かれた原画には、見本として実際の布やレース、ビーズが貼り付けてあるなど細部までこだわる丁寧さがうかがえる。別の人気シリーズ「ルルとララ」で、菓子店を営む女子小学生2人の服装のデザイン画もあり、ファン必見だ。
2005年4月に初巻を発行した「ルル―」は、現在27巻。物語に出てくる菓子のレシピは、読者の子どもたちの好奇心をくすぐる。絵は配色に気を配り、文字は平仮名を使ったり、大きくしたりして表現に工夫していることが、ラフ画から分かる。本の構成をまとめた台割り表やラフ原稿も紹介。編集者との手書きのやりとりが記され、制作過程が垣間見える。
人間の少女、ジャレットが魔女のトパーズの遺産を相続し、ハーブの薬店を始める「魔法の庭ものがたり」シリーズ。全25巻の表紙が一堂に並ぶ。表紙絵にはいずれもジャレットと6匹の子猫、植物を取り入れ、色彩バランスを綿密に考慮しているという。「ムーンヒルズ魔法宝石店」シリーズの展示は、色を付ける前のモノクロの絵などを見ることができる。
作品に登場する家や街並み、自然の風景は、ヨーロッパから着想を得ているという。同展で飾られている愛用品の色鉛筆やクレヨンはスイス製だ。
この他、会場入り口近くに初期に手がけた実写映画「モスラ2海底の大決戦」の衣装のデザイン画や、現在は発行していない絵本の原画などを展示。フォトスポットを2カ所設けているほか、トートバッグ、登場キャラクターの縫いぐるみ、ポストカードなどのグッズや同展で紹介している書籍を販売。本は同館の「絵本のひろば」で、手に取って読むこともできる。
会期中は関連イベントを行い、8月19日は、あんびるさんの講演会・サイン会を開催。定員120人で、同月2日まで受け付ける(応募多数の場合は抽選)。「なんでも魔女商会」の主人公、シルクの衣装(サイズは120センチ、130センチ)を着用できる写真撮影会は今月30日、8月11、26日に実施する。当日受け付けで先着20人。
午前9時半~午後5時。火曜休館(同月15日は開館)。一般500円など。問い合わせは同館(☎027-373-7721)へ。
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