手のひらの芸術、魅了 根付展が開幕 高円宮家所蔵200点 15日まで 茨城県五浦美術館

茨城新聞
2026年8月10日

高円宮家所蔵の根付コレクションを紹介する「高円宮妃久子殿下根付コレクションと写真展」が、茨城県北茨城市大津町の県天心記念五浦美術館で開かれている。根付は印籠(いんろう)などの小物を着物の帯につり下げる際の「留め具」。海外では「手のひらの芸術」と高い評価を得ている。高円宮妃久子さまは結婚前の1970年代に英国で学生生活を送る中、根付コレクションに接し、収集を始められた。動物や暮らしの機微を形にした根付約200点が公開され、来館者を魅了する。同展は15日まで。

根付は素材の彫刻や造形美を競い合う装飾品として江戸時代に発展。だが、明治期以降は洋装の普及とともに需要は激減した。一方、海外では美術品としての評価が高く、博物館や個人によって収集された。

今回はコレクションの中から、象牙やツゲなどを素材に動物や暮らしの機微を形にした現代の根付約200点を公開。数センチの部材に施された繊細な彫刻や、サルやカエルをモチーフに川柳のような「ひねり」も鑑賞の肝となる。

このうち、高円宮憲仁さまが結婚直前の84年、自身の干支にちなみ久子さまへ贈った根付「十二神将 午」は馬の顔をした武神の勇ましい立ち姿が精緻(せいち)に表現されている。

会場には久子さまが旅行先の風景に根付を配して撮影した写真約40点も加わり、根付の魅力を高めている。

同県水戸市の女性(75)は「高円宮家の根付はどれもすてき。江戸時代の粋を感じました」と声を弾ませた。

世界に誇れる日本の根付文化を多くの人に知ってもらおうと、民間の実行委員会が主催。実行委会長を務める善重寺(水戸市酒門町)の藤本貫大住職(59)は久子さまと根付作品などを通じて10年来の交流があり、開催に向けて準備を進めてきた。

藤本住職は美術思想家の岡倉天心(覚三)が1896(明治29)年ごろ、同寺を訪れて所蔵の「木造聖徳太子立像」=国指定重要文化財=に価値を見いだした由緒を紹介。さらに天心が根付を優れた彫刻と捉え、米ボストン美術館で魅力を発信する図録出版に携わったという経緯に触れ、「今根付展で茨城の彫刻文化が一本の線でつながった。たなごころの美を堪能してほしい」と呼びかけた。

関連の催しとして、善重寺で6~11日、木造聖徳太子立像の特別開帳が行われる。