ひんやりしたトンネル内で列車映像上映、鉄道遺産の魅力発信へ 国指定重要文化財「旧碓氷峠鉄道施設」(群馬・安中市)で今夏から

上毛新聞
2026年7月26日

国指定重要文化財「旧碓氷峠鉄道施設」(群馬県安中市)で今夏、れんが造りの暗いトンネル内にスクリーンを設け、映像を投映する「トンネルシアター」の取り組みが本格的に始まる。トンネル内は暑さをしのげるとして、安中市の「クールシェアスポット」に登録されている。国内を代表する高原リゾート地で避暑地の軽井沢からの涼風が吹き込む歴史空間で、かつて走っていた列車の映像を上映する。訪れた人たちに往時の様子を追体験してもらい、鉄道遺産の魅力を伝える。

企画するのは、鉄道施設の案内ボランティア「碓氷線文化財インストラクター」の加藤正夫さん(59)。会社勤務の傍ら、休日を利用し、名所「碓氷第三橋梁(きょうりょう)」(めがね橋)周辺で観光客を案内している。20年以上前から活動を続ける中で「トンネル内という天 然クーラーの効いた絶好の場で、列車が走る映像を上映すれば、『鉄道の聖地』への理解がより深まる。一目瞭然」と思い立った。

トンネルシアターの“会場”は、1893(明治26)年に開通した旧碓氷線(横川ー軽井沢駅間)のめがね橋のすぐ隣、軽井沢方面にある「第六隧道」。旧碓氷線の隧道26カ所のうち最も長い546メートルあり、出入り口の高低差が36メートルある。加藤さんは「豊かな自然に包まれ、涼しい日陰にあるトンネル内の空気は、チューブを周りから冷やしているような状態」と説明。「冷えた空気は重くなり、自然と下方(軽井沢から横川方面)へと流れる。(第六隧道)は長い分、空気が長く冷やされ、特に涼しい」という。

こうした利点に着目し、所有するスクリーンやプロジェクター、電源用バッテリーを搬入。試行錯誤を繰り返し、観賞しやすい環境を整えた。元国鉄職員が撮影した旧碓氷線を走る懐かしい列車の映像などを上映し、来訪者に自由に観賞してもらう。

今夏から秋までの週末を中心に、おおよそ午前10時~午後2時の時間帯に不定期で実施予定。加藤さんは「電気を一切使わずに涼しい場所が、トンネル内にあることを知ってほしい」と力を込める。

トンネルシアターの本格実施を前にした16日、加藤さんが現地で実演を試みた。16日は午後1時過ぎの時点で外気温が35度近くあったが、トンネル内は22度だった。観光で訪れ、映像をたまたま目にした愛知県名古屋市内の男性(68)は「うだるような暑さだが、快適で驚いた。映像を見て、ここを列車が走っていたことを知った。貴重な体験ができた」と満足そうだった。

神奈川県横浜市内の大学生(22)は「軽井沢方面から風もいい感じに吹いていて、心地いい。かつての碓氷線をイメージでき、より関心が高まった。とてもいい取り組み」と感心していた。

群馬県安中市は鉄道施設を中核にした世界遺産登録運動を推進している。鉄道遺産を愛するボランティアが知恵を絞り、善意で実行する新たな挑戦は、登録運動の機運醸成にも一役買いそうだ。申請登録している。