日比野克彦さん60年の歩み 660点を展示 水戸芸術館 茨城

段ボールを使った作品で知られる現代美術家、日比野克彦さん(66)の約60年の活動をたどる「日比野克彦 ひとり橋の上に立ってから、だれかと舟で繰り出すまで」展が、茨城県水戸市五軒町の水戸芸術館で開かれている。アートへの興味が芽生えた少年時代から現在に至る約660点の作品を展示。個人的な作家活動から地域を巻き込んだ芸術プロジェクトまで、縦横無尽に活躍する姿を関わる人々との視点を通して紹介する。
日比野さんは1958年、岐阜県岐阜市生まれ。東京芸術大大学院在学中に段ボールを素材にした作品で注目を浴び、82年に日本グラフィック展大賞を受賞。その後、95年のベネチアビエンナーレをはじめ、国内外で展示を行うほか、舞台美術や芸術祭のプロデュース、地域や福祉に関するアートプロジェクトなど、さまざまな分野で活動している。
2022年に東京芸術大学長に就任。岐阜県美術館と熊本市現代美術館(熊本県)の館長も務めている。
日比野さんの同館での個展は20年ぶり。タイトル「ひとり橋の上に立ってから-」は、幼稚園児だった5歳の時に家近くの橋の上で初めて「ひとり」を実感し、つながりを求めて描き始めたという記憶に基づくという。アートへの興味が芽生えた幼少期から現在に至る活動の変遷を多彩な切り口で構成する。
創作の原点を探る章では、洋裁が得意だった母親とのエピソードを交え、小学時代に制作した版画や油彩画を紹介。他に、日比野さんの代名詞となった段ボールを素材にした作品群、03年に新潟県で始まった「明後日朝顔プロジェクト」の経過を伝える手書き新聞、本展タイトルにちなんだ橋を題材にした作品などを一堂に並べる。
開幕前の内覧会で、日比野さんは活動の変遷を振り返りながら、「人とのつながりで生まれた自分のアートを検証する機会としたい」と話した。
会期は10月5日まで。月曜休館。8月11日、9月15日は開館し、各翌日は休館。問い合わせは同館(電)029(227)8120。