《食いこ》井上糀店(茨城・つくば市)
![](https://kitakan-navi.jp/wp-content/uploads/2025/02/17384051444182_photo1_002-e1738484108589.jpg)
■伝統的製法、品質に自信
和食に欠かせないみそ、しょうゆ、酢、みりん、酒。これらの生産に必要不可欠なのが麹(こうじ)。コウジカビを原材料に付着させ、培養、繁殖させたもので、菌が作る酵素の働きによって食品は発酵する。
一般的に「麹」は麦、豆、米など穀物で作るこうじ全般を指し、「糀(こうじ)」は米を原料としたものを指す。
徳川家光の時代に筑波山神社参拝の道として開かれ、「日本の道100選」にも選ばれた「つくば道」の程近く、控えめな看板の奥に知る人ぞ知る店はあった。昔の面影を残す周辺の街並みは研究学園都市とは違った趣をたたえる。
![](https://kitakan-navi.jp/wp-content/uploads/2025/02/17384051444182_photo2_001-360x236.jpg)
昔ながらの製法で作られた糀みその半熟成(左)と熟成
明治初期から続く茨城県つくば市北条のこうじ屋、井上一彦さん(69)と祐也さん(37)親子は、青森県産の大豆、筑波山周辺で生産した北条米を主原料に、麹蓋(ぶた)と呼ばれる木箱を使った伝統製法で造る糀と、同店の糀で天然醸造したみそを販売している。客が持ち込んだ米で糀やみそを仕込むオリジナルのみそ造りもしている。
1回の仕込みが4日間の作業工程はおおむねこうだ。米を一晩水に浸けた後、蒸して冷ます。大型の木箱「船」に入れて麹菌をかけ、温度20~30度前後に保った専用室「室(むろ)」で寝かす。天地を入れ替えてコウジカビの成長を促しつつ見守る。
一彦さんは「作業のほとんどは家族による手作業のため生産量も限られるが、一箱ごとに丁寧に造ることが可能」と経験に培われた熟練の技を生かせる余地を強調する。
コウジカビが繁殖し、糀となる過程で重要なのが湿度の調節。そこで登場するのが稲わらの「菰(こも)」。「小型の木箱、麹蓋に糀を移し、水を含ませた菰でふたをすることで温度を管理し、湿度100%を容易にします」と祐也さんが伝統製法の一端を明かす。
「見極めた原料と伝統的製法を守った製品の品質には自信があります。それを分かって買いに来る常連も多い」と一彦さんが言葉を継いだ。
同店の天然醸造みそは「色が濃く深い味わいの熟成と、色が薄く糀の香りが残る半熟成があり、筑波山地域ジオパーク認定商品にも選ばれました。今後はみその販売にも力を入れていきたい」と祐也さんが展望を話した。
■お出かけ情報
井上糀店
▽茨城県つくば市北条176
▽営業時間は午前9時~午後5時(不定休)
▽(電)029(867)2021
▽みそは直売の500グラム500円から。糀は500グラム700円から(2025年1月現在)
▽ホームページhttps://www.inouekoujitenn.com/でも購入可能。