うなぎ老舗「ぬりや」(茨城・水戸) 地ビール生産に参入 小売店向け販売も
うなぎ料理の老舗「ぬりや」(茨城県水戸市泉町)は、11月中にも地ビールの生産に本格参入する。敷地内で醸造施設を新たに整備し、店内での提供や小売商品の販売に乗り出す。コロナ禍後も厳しい経営環境が続く中、地元産の原料やうなぎ料理店としての強みを生かした商品開発を進めていく。
同社は10月下旬、地ビールを生産する「MITO BREWING 大工町醸造所」を開設。鉄骨造2階建てで、延べ床面積は48・6平方メートル。1階に麦芽を糖化処理する専用釜やろ過装置、発酵タンク4基などを備えて醸造し、2階には瓶詰めラインを整備した。
出来たてのビールを楽しめる「タップルーム」も併設し、仮営業を始めた。土・日曜限定で販売する。本年度内には本格営業にこぎ着け、営業日も拡大していきたい考えだ。
地ビールは年産1万2千リットルのペースで醸造する。販路の広がりや需要に応じ、段階的な増産も目指す。当面はタップルームで提供するほか、11月中にぬりやのメニューに加える。京成百貨店など小売店向けに330ミリリットル瓶の販売も始める。
商品は、大麦原料の「ペールエール」、小麦を使った爽やかな飲み口が特徴の「ウィートエール」、ホップを後追いで注入し香りや滑らかさに強みを出した「ヘイジー・IPA」の3種類。タップルームでは、いずれも290ミリリットルを税込み800円、480ミリリットルを1200円で販売する。
同店では新型コロナウイルス感染症の5類移行後も、宴会需要などの落ち込みにより、客足はコロナ禍前の2~3割減が続く。稲野辺久智専務は地ビールの生産により「高い付加価値で楽しんでもらえるメニュー展開や商品開発を進める」と考えを示した。
主原料の麦芽はドイツ、ホップはフランスからそれぞれ輸入。今後、地元産の原料活用も視野にレシピ開発も目指す。開発製造を担う佐藤千秋さんは「うなぎ料理に合うビールや、サンショウなどを副材料に使ったオリジナル商品も検討したい」と話す。
ぬりやは1900年代初めに開業。戦災による店舗消失後、戦後間もなく再建した。2011年の東日本大震災では建物が半壊する被害を受け、14年に敷地内へ移転新築した。