東西作家の絵画比較 県五浦美術館企画展 天心の思想考察

茨城新聞
2015年10月1日

19世紀のフランス画壇に発生した一派「バルビゾン派」と、五浦の画家たちによる作品を展示し、それぞれの芸術の特徴、歴史的意義を紹介する企画展「東西のバルビゾン」が、北茨城市の県天心記念五浦美術館で開かれている。同館は「双方とも美しい自然の地で活動し、自分たちが信じる絵画を追求した、という共通の姿勢がある」と企画の趣旨を話す。18日まで。

■県内初出品

同展は、岡倉天心が五浦に拠点を移した際の「五浦を東洋のバルビゾンに」という言葉から着想された。

天心が目指した美術、思想は何だったのかを、東西作家の比較展示によって考察する試みとなっている。

県内初出品となるバルビゾン派の作品10点含む、計26点を展示している。

■ミレーにコロー

当時、格下の主題とされた風景画に価値を見いだしたバルビゾン派の画家たちは、身近な自然の美を主役に据えた。ミレーの「垣根に沿って草を食む羊」は人物を脇役に、木々やそこに集う動物たちを写実的に描き出している。コローの「ヴィル・ダヴレーの湖畔の朝霧」は、画家が自分の画風を確立したころの作品とされ、枝ぶりの良い木やのどかな水辺に、風景の持つ物語性が表現されている。

■代表作が一堂

日本の画家は菱田春草、横山大観、下村観山、木村武山らが登場。春草の「落葉」、武山の「阿房劫火(あぼうごうか)」など大作も並んでおり、荒木扶佐子首席学芸員は「五浦を訪れた4人の作家の代表作を、一堂に集めた機会も珍しい」と話す。ほか、大観が朦朧(もうろう)体を模索していた時代の、個人蔵だった作品なども展示されている。

同展では天心や大観直筆の、五浦に建てた邸宅の間取り図6点も公開。小規模ながら絵画表現の魅力を凝縮した展示となっている。月曜休館(12日は開館、13日は休館)。
(写真はフランソワ・ミレー「垣根に沿って草を食む羊」1860年ごろ、千葉県立美術館蔵)

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