潮来唯一の船大工・荒原さん 82歳、魂のサッパ舟

茨城新聞
2017年4月24日

水郷・潮来市にたった一人残る船大工、同市水原の荒原勇さん(82)が丹精を込め、花嫁を乗せる手こぎのサッパ舟を完成させた。若いときのように体が動かなくなったという荒原さん。「これが最後かもしれないと思いながら仕上げた。娘を嫁に出す思い」と話す。水郷潮来あやめまつりの開幕を5月末に控え、職人の魂を込めた一隻が進水する。

「若い頃はもっと早く造れた」。舟は、農業を営む息子の手を借り、約半年かけて仕上げた。

技術の巧みさは衰えていない。サッパ舟の美しい曲線はササの葉の形に由来する。側面の板は火であぶりながら曲げていく。かんな、のみ、船くぎなど、使い慣れた道具が並ぶ作業場で、「設計図なんてない。寸法は全部頭に入っているよ」と笑う。

荒原さんは1934年、旧大野村(現鹿嶋市)に生まれた。中学校を卒業すると、北浦の対岸で代々船大工の荒原家で修業、婿に入り4代目を継いだ。

当時、北浦の漁師たちがワカサギ漁に使うのは帆引き船。船大工は潮来地区だけでも10軒ほどあったという。修業がつらく、夜逃げしたこともあったが、「やっぱり舟を造るのが好きだった」。

時代の波は容赦なく押し寄せた。軽くて丈夫な繊維強化プラスチック製の漁船が台頭。市内に網の目のように張り巡らされ、小舟が行き交った水路も埋め立てられていった。木造船の注文は激減、船大工もいなくなった。

転機は1980年代。当時の潮来町がサッパ舟を観光に生かそうと、荒原さんたちに制作を依頼した。あやめまつりの嫁入り舟用として、定期的に新造することになった。

白無垢(むく)姿の花嫁を乗せ、へさきに「寿」のちょうちん。大勢の観光客が見守る中、ぎっちら、ぎっちらと、船頭が櫓(ろ)をきしませながら、ゆっくりと川面を滑る。これまで、荒原さんの舟で嫁いでいった「潮来花嫁さん」は数知れない。荒原さんの娘もその一人。父としての自慢だ。

市内でただ一人となった船大工の後継者はいない。「この仕事だけでは今の時代やっていけないから、仕方のないこと」。数年前に体調を崩したが、作業場には通い続けた。「周りにハッパを掛けられ、なんとかやってきただけ」。照れたように振り返る。

真新しい舟は5月上旬の進水式で、潮来を横断する前川に浮かべられる。あやめまつりでは花嫁を乗せる予定だ。出番を待つ舟を見詰めながら、「自分の舟で嫁入りしてもらえるのは、本当にうれしい」と目を細める。

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