高萩で初の県大会 「炭焼唄」伝承へ100人熱唱

茨城新聞
2016年12月5日

高萩市君田地区でかつて歌われていた民謡「君田の炭焼唄」を歌い継ぎ広めていこうと、初めての県大会が4日、同市高萩の市文化会館で開かれた。大会に合わせて創作した踊りも初披露。県内各地からエントリーした約100人が、同地区の昭和の風景や素朴な住民生活をほうふつさせる歌声を響かせた。

同市山間部の同地区では昭和40年代まで住民の多くが農閑期に炭焼きで生計を立てていた。炭焼唄は炭作りに励んだ男たちが口ずさんだ歌。合いの手の「ハァー ザラコン」は炭をのこぎりで切る音。「七日七夜の燃える炎に想いをこめて」や「晴れた夜空にゃ ほしのすけ」などとユニークな歌詞が特徴。

開会式で木田恒夫実行委員長は「やっと大会開催にこぎ着けた。高萩の財産として継承発展に務めていく」と決意を表明。小田木真代市長は「多くの人に伝承するため後方支援したい」と述べた。

炭焼唄に合わせた踊りは、「民謡 福龍会」(日立市十王町)の女性7人が披露。編みがさにかすりの着物、赤い前掛け姿で、淡々と行われる仕事の様子を表現。考案者の松倉幸恵さん(60)は「何度も唄を聴くうちにイメージが湧いてできた。炭焼き仕事の孤独感や充実感を表した」と無事終えてホッとした表情。高萩市出身で炭焼唄の歌い手として知られた民謡歌手、沼尾道人さん(故人)が歌う1993年の映像も流された。

会場に集まった人たちは、尺八の奏でる音と力強く伸びやかな歌声に耳を傾け、歌詞をかみしめていた。

地元で歌い継いでいこうと呼び掛けてきた下君田区長の鈴木勝一さん(69)は「非常にうれしい。君田の名前が広まり、君田に足を運んでもらえるきっかけになれば。地元で皆が歌っていける雰囲気をつくりたい」と話した。

下君田地区では昨年、口承が長らく途絶えていた炭焼唄を披露する集会を開催。今年5月には市民らがカラオケや舞踊を披露する恒例の新春歌謡まつりの中で、「おらが高萩~君田の炭焼唄大会」を開き、23人が参加した。

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