《山の日8・11 期待と課題(1)》制定 ルート格付けで安全登山 雄大さ楽しもう

上毛新聞
2016年8月7日

7月30日、上越国境に近いみなかみ町の谷川岳・天神尾根。平年より遅れた梅雨明けを待ったかのように、多くの登山客が週末の山歩きを楽しんでいた。登山の季節はこれから本番。祝日「山の日」が今年始まるのに伴い、山岳団体関係者から「群馬の山に来る人も増えるのではないか」との声が上がる。
◎曲折
8月11日が「山の日」になるまでは曲折があった。
海の日(7月第3月曜)と同様に、山や自然に親しむ祝日をつくろうと、全国の山岳5団体が連携して2010年に制定運動を開始。超党派の国会議員連盟が祝日法改正案の国会提出に向けて動いたが、山の日の当初案は「8月12日」だった。経済活動への影響が少ないお盆期間に合わせるのが、妥当との判断からだ。
だが、12日は1985年に上野村で起きた日航ジャンボ機墜落事故の日。鎮魂の日を祝日とする案に、遺族や関係者から疑問と不満が噴出した。大沢正明知事は13年11月の記者会見で、「遺族の心情を考え、見直してほしい」と反対の意向を表明。最終的に11日に落ち着き、14年の通常国会で可決、成立した。
「海なし県」の本県は県土面積の8割近くを山地が占める。10年には独自に「ぐんま山の日」(10月第1日曜)を制定。県は全国知事会などを通じて「山の日」を働き掛けてきた経緯がある。祝日化でぐんま山の日は廃止されたが、県は6、7日に県庁で開かれる「ぐんま山フェスタ」などを通じ、山に関する情報を一層発信していく考えだ。
「山の怖さを知らない初心者や、体力の衰えを認識しない中高年者による山岳遭難事故を減らしたい」。山の日を目前に控え、県と県山岳団体連絡協議会は2日、県内85の主要登山ルートを格付けた「山のグレーディング」を発表した。同フェスタでパネル展示し、一覧表を配ってお披露目する。
◎呼び水
グレーディングは他県の事例を参考に登山道の状態や、地図を読む能力などをベースとした「難易度」、所要時間や標高差などから算出した「体力度」を組み合わせて段階化。県は「登山者の力量に応じた山選びの参考になる」とアピールし、山への呼び水になることを期待する。
連絡協の八木原圀明会長は、山岳関連団体で会員の減少や高齢化が進む一方、健康志向から山を訪れる一般愛好者は多いと指摘。「グレーディングを目安にして安全で楽しい登山を心掛け、技術や能力も向上させてほしい」と話した。
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「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」を理念に据えた祝日「山の日」まで1週間。県内では観光などへの期待が高まるが、安全対策や環境の変化といった山を取り巻く課題は少なくない。豊かな山の自然を次世代にどう引き継いでいくか考える。