柳下征史さん追悼84点 笠間日動美術館で写真展 かやぶき民家や県北日常 茨城

茨城新聞
2025年1月29日

茨城県内のかやぶき民家を30年以上にわたって撮り続けた記録写真家、柳下征史さん(1940~2023年)の遺作展「追悼 柳下征史写真展」が、笠間日動美術館(同県笠間市笠間)で開かれている。これまで刊行した写真集に載せたカットなどのほか、昭和40年代の県北山間地域の人々の日常の暮らしを収めた写真、西金砂神社の祭礼の記録など84点を並べ、足跡をしのばせている。

柳下さんは東京で生まれたが、幼少期に戦災を避け、父親の出身地の旧山方町(現同県常陸大宮市)に疎開、そのまま同地を拠点に生涯を送った。高校卒業後、就職した日立製作所の工場で広報誌の部署に配属となり、写真技術を学んだのが、写真との出合いだった。1975年に独立し、「ヤギ写真工房」(同県ひたちなか市)を設立した。

なりわいの傍ら、写真家として追求するテーマを持ちたいと考えていた柳下さんは、平成に入った頃、かやぶき民家に照準を定め、県内をフィールドに撮影を始めた。その成果は94年の初めての写真集「ひだまりのワラ葺(ぶ)き民家」で世に問うた。その後も追求を重ね、かやぶき民家の仕事は、柳下さんの代名詞になった。

展示構成は主に▽かやぶき民家▽県北の暮らしの記録▽西金砂神社の小祭礼、大祭礼-の3本柱。撮影の2005年からカレンダーを作成し、その実物を全て並べている。県内の書家、川又南岳、俳人の今瀬剛一両氏とコラボした作品も加えた。

同展は「日本の美 再発見。」という洋画で構成した企画展との「同時開催展」という位置付け。主催は同美術館だが、出品作の選択、構成には征史さんの三男でヤギ写真工房を継いでいる柳下知彦さん(45)が関わった。

知彦さんは「遺作展なので、父の仕事を網羅する展示にしたかった。かやぶきだけでなく、30代の頃などもっと古い時代に撮った炭焼き、行商などの写真、それに思い入れを込めて取り組んでいた西金砂神社の祭礼も加えた」と話す。

ギャラリートークが1月11日、会場であり、知彦さんは父の作品を解説しつつ、「息子の自分が知らない柳下征史もあると思うので、ご教示いただければうれしい」と来場者に呼びかけた。トークは2月8日にも予定されている。

同展は3月9日まで。月曜休館。チケットは「日本の美再発見。」と共通で、大人1300円、65歳以上1000円、大学・高校生900円、中学生300円、小学生無料。問い合わせは同館(電)0296(72)2160。