10年ぶり詩集、現代詩人賞 散文詩の粕谷さん(茨城・古河) 「想像巡らせ書いていく」

茨城新聞
2024年7月3日

散文詩の代表的作家で茨城県古河市在住の粕谷栄市さん(89)が、昨年10月に10年ぶりに発表した9冊目の詩集「楽園」(思潮社)で、第42回現代詩人賞(日本現代詩人会主催)を受賞した。粕谷さんは「賞が取れたのは、もちろんうれしい。これからも想像を巡らせ、詩を書いていく」と話す。

粕谷さんは37歳の時に発表した最初の詩集「世界の構造」(1971年)で第2回高見順賞を受賞し、その後も数々の賞を受賞してきた。「散文詩のみを書いてきた。何でも好きなように書けばそれが詩。それをやってきた」と詩作への思いを語る。

本業は市内で江戸時代から続く製茶問屋「二津屋」の8代目。いとこで詩人の粒来哲蔵さん(1928~2017年)の影響で、高校の時に詩作を始めた。家業を継ぐため商業科で学んでいたが、恩師の強い推薦もあり早稲田大に進学し、早稲田詩人会に所属した。同期には後に歌人、劇作家として活躍した寺山修司(1935~83年)もいた。

「詩人会では多くの仲間と詩の話ばかりしていた。ここで得たものは大きかった」と振り返る。

表題作の「楽園」については「自分でも気に入っている詩」と言い、今回の詩集の冒頭に掲載した。「人間は夢と現実、その交差するところで生きている。想像の世界は面白い。これからも詩で自分を表現していきたい」

9月28日から12月24日まで古河文学館(同市中央町)で企画展「散文詩の巨人 粕谷栄市」が開かれる。粕谷さんの創作の歩みと作品を紹介する。問い合わせは同館(電)0280(21)1129。