156年の歴史に幕、群馬・みどり市の老舗和菓子店「長寿軒本店」が閉店へ 16、17日は人気の生ロールケーキのみ限定販売

上毛新聞
2024年5月16日

和菓子店が作る生ロールケーキで知られる創業156年の老舗、長寿軒本店(群馬県みどり市大間々町)が17日で閉店する。後継者はおらず、4代目の長沢淳さん(72)と妻の寛子さん(64)は「やりきった気持ちが大きい。もう体力の限界」と晴れやかな表情を見せる。閉店を伝える張り紙を掲示した13日以降も、2人は笑顔で接客に当たっている。

長沢さんの曽祖父、和平さんは幕末、浅草にあった「岡埜栄泉」で修業。当時、大間々で旅籠を営んでいた長沢家に婿養子として入り、明治元(1868)年に和菓子店を創業した。3代目の安太郎さんが創作した「黒糖飴」は1977年、全国菓子大博覧会で金賞に輝き、現在も同店の定番商品の一つだ。

都内の専門学校洋菓子科で学んだ後、前橋市内で修業した長沢さん。家業に加わった20代に「格安のロールケーキを作れば、お客さまに喜んでもらえる」と考え、素材にこだわった生ロールケーキを創作した。同商品は口コミで徐々に人気が高まり、2000年代に入ると県外から訪れる人もいた。寛子さんは「最盛期には1日200本を売った。開店前に列ができる日が続いた」と当時を振り返る。

最盛期は1日200本売れたという人気の生ロールケーキ(みどり市HPより)

店舗は家族経営で、長沢さん夫妻が長年、2人3脚で切り盛りしてきた。日帰り旅行以外をしたことがないという寛子さんは「閉店後は今までできなかったことがしたい。イベントにも行ってみたい」と期待を膨らませる。

発売から半世紀を経た生ロールケーキは現在、「みどり市ブランド商品」にも認定されている。市の担当者は「最も人気が高い逸品の一つ。とても残念」と話した。

16、17の両日は午前9時から生ロールケーキ(1250円)のみ1日40本、先着順で販売する。1人1本まで。