「水戸史学」休刊 6月の100号最後に 茨城の歴史考察、半世紀 高齢化、物価高響く

茨城新聞
2024年3月30日

半世紀にわたり茨城県の歴史に関する考察を発信してきた郷土史研究団体「水戸史学会」(宮田正彦会長)の機関誌「水戸史学」が、6月の100号を最後に休刊する。役員や会員の高齢化や物価高騰などで、従来の質を保ちながら継続して発行するのが難しくなったと判断。最新の99号に休刊の意向を明記しており、今後はブログを活用しながら情報発信する方針だ。

同会は教員や研究者、関心のある市民など約200人が会員となり、1974年に発足した。水戸藩の大日本史編さんと同様、史料の出どころを明らかにしながら多角的に分析、考察を重ねる研究法を引き継ぎ、日本の歴史を正しく理解することを基本姿勢としている。

主な活動は、外部講師を招いた記念講演と研究発表、年に2回の機関誌発行。「水戸史学」はA5判で、内容に応じて各号50~100ページにわたる。郷土史に限らず、会員らが各自の研究対象に応じて執筆し、論文を掲載してきた。

同会会長は茨城県の初代教育長、西野正吉さん、水戸学研究の第一人者、名越時正さんに続き、現在の宮田正彦さん(86)が3代目。98年6月号から同誌の編集者となり、同時に会長に就任。豊富な知識を生かし、25年にわたって編集作業を担ってきた。

同会では正会員、賛助会員の年会費や寄付金などを活動費に充てている。現在の会員は約180人で、年会費は1人4千円。機関誌は毎号300冊発行してきた。事務局長の住谷光一さん(77)は、高齢化などで会員が減少傾向にある中で、「年会費で印刷費や郵送費を賄うのが難しくなっている」と話す。

さらに課題だったのは、後任となる編集者の確保だ。宮田さんは原稿を集め、著者に確認しながら校正し、完成するまでの作業を一人でこなしてきた。「好きなことだから苦にならない」とするが、「年齢を考えると、質を落とさずに継続できるかどうか不安だ」と語る。

「機関誌は貴重な記録。できることなら残していきたいが、やむを得ない」。宮田さんは次号(6月号)を区切りに、紙ではなく、ブログを活用して情報発信することを検討しており、今夏に開く総会で会員に諮るという。