《まち里歩き》スタート地点 向井千秋記念子ども科学館(館林市城町) 宇宙と文豪 身近に 

上毛新聞
2017年3月16日

日本人初の女性宇宙飛行士、向井千秋さんら多くの著名人を輩出している群馬県館林市。市内には彼女らの功績をたたえる施設や資料館などが点在する。暖かな日差しのお出掛け日和に散策した。

市役所から東へ200メートルほどの位置にある「向井千秋記念子ども科学館」(❶)を出発点に選んだ。向井さんが宇宙から持ち帰ったヤマツツジの種子や、実際に着用した宇宙服などの展示をはじめ、月の重力を疑似体験できるコーナーがある。休日には県内外から多くの家族連れが訪れる。


スペースシャトルの船内を再現した展示も、目玉の一つだ(❷)。向井さんが、地球の生物が宇宙で繁殖できるかなどを観察した実験室を再現したほか、船内での洗髪の様子を紹介した非日常的な映像が流れる。2度も宇宙飛行した向井さんの活躍に驚かされるとともに、はるか遠い存在の宇宙を身近に感じた。

宇宙へのロマンに浸りながら表に出ると、同市出身の文豪、田山花袋(1871~1930年)の生涯を伝える「田山花袋記念文学館」が目に留まった。館内には、花袋が書いた新聞連載の切り抜きや書物が並ぶ(❸)。館林周辺を描いた作品も数多く並び、花袋の“地元愛”を感じた。今年は開館30周年記念事業なども予定している。

文学館近くには、旧秋元別邸がある(❹)。館林藩最後の藩主、秋元家の子孫が別邸として使用した歴史的にも貴重な建造物だ。市のボランティア団体「ふるさとガイド秋元別邸護(まも)る会」の荒井孫四郎会長(83)が「今でも地元では『秋元さま』と親しみを込めて呼ばれているよ」と教えてくれた。

2月上旬ごろから、つつじが岡公園周辺で目撃情報が多発した珍鳥ヤツガシラ(❺)をカメラに収めようと、同公園に立ち寄った。国内ではなかなか観察できない渡り鳥で、驚いたり興奮すると、頭にある冠羽(かんむりばね)を扇のように開くのが特徴だ。
数人のアマチュアカメラマンと2時間ほど一緒に探したが、この日は姿を見せることは一度もなかった。撮影できた人は幸運の持ち主かもしれない。

散策していると、ウメの香りが園内を包み込んでいるだけでなく、ツツジの花山にはしっかりと新芽が芽吹いていることに気付いた(❻)。いま、季節が着実に変わろうとしている。春の気配を感じるとともに、館林の歴史に名を刻んだ功労者に思いをはせた。
(文化生活部 井部友太)

 

≪コースの特徴≫
ほぼ平たんな約2キロ。歩道が整備されており、大人から子どもまでのんびり歩ける。

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