限定6着の「スカジャン」 群馬の伝統技法で刺しゅう施す 

上毛新聞
2023年12月15日

刺しゅう事業などを手がける福田商店(伊勢崎市東小保方町、福田豊社長)が、群馬県桐生市内で大正時代以降に発展した技法「横振り刺しゅう」を施したスカジャンを製作した。文字の体裁を整えた「タイポグラフィー」をデザインに取り入れ、本県ゆかりの戦国武将、真田幸村を表現。同社は「かつて一世を風靡(ふうび)した横振り刺しゅうを多くの人に知ってほしい」としている。

横振り刺しゅうは、ミシンのペダルを踏むと針が上下、ひざの横にあるレバーを動かすと針が左右に動く特徴を生かした技法。米軍横須賀基地(神奈川県)に駐留した軍人が本国に帰る際の土産品として作られたスカジャンの刺しゅうは元々、横振り刺しゅう職人が手がけていたという。

今回の製品は、同社従業員で横振り刺しゅう職人の石坂こず恵さん(49)が担当。17年ほど前、母のヨシ子さん(78)に横振りミシンの基本的な扱い方を教わり、独学で腕を磨いた。石坂さんは「家紋の『六文銭』の円をきれいに仕上げるのが難しかったが、納得のいく作品が仕上がった」と振り返る。

スカジャンの胸には、幸村の父・昌幸と兄・信之の刺しゅうを施した。背中には、デザイナーの井上祥邦(よしくに)さん(東京都)が考案したよろいを身にまとった幸村を表現。井上さんが得意とするタイポグラフィーを用い、アルファベットで「SANADAMARU(真田丸)」「TSUWAMONO in HINOMOTO(日本(ひのもと)一の兵)」などと幸村に関連する言葉を並べた。

高付加価値化として、桐生和紙(桐生市梅田町)の「桐生紙」で包み、関口桐箱店(伊勢崎市宮子町)のきり箱に入れた。

福田商店と井上さんを仲介するなど、今回のプロジェクトを企画したオフィス刃(高崎市石原町)の小榑浩之さんは「横振り刺しゅう職人は引退している人を含めても10人程度。群馬伝統の技法を絶やさないために、オール群馬で商品化した」と話す。六文銭にちなみ、商品は6着限定。価格も66万6666円とした。

スカジャンは16、17日に横浜市で開かれる「お城EXPO」でお披露目される。