「鶴舞う形の認知が背景」群馬版が一番人気だった「都道府県ピンバッジ」を群馬出身の仕掛け人が解説

上毛新聞
2023年6月13日

オンラインショップで群馬県版が2度にわたり最速で完売したことで話題になった、地図大手のゼンリン(北九州市)の「都道府県ピンバッジ」。2度目の再販開始に合わせ、群馬出身の仕掛け人2人が上毛新聞の取材に応じ、商品に込めた思いを語った。

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同社は6月2日、オンラインショップで都道府県ピンバッジの予約受付を、群馬を含む47都道府県分で再開した。15日午後3時まで受け付ける。1人4個まで。ピンバッジは金と銀の2色あり、1個1100円。群馬の製造数は今回も非公表だが、前回よりも多めに用意したという。今月下旬から順次配送する。

取材に応じた2人は広報担当の都丸優樹さん(39)=伊勢崎市出身、マーケティング担当の山口朋希さん(37)=前橋市出身。ともに高校卒業後に上京した。地図好きで、大学や大学院では地理を専攻。2008年にゼンリンに入社した同期社員だという。

同社は主に法人向けの地図情報を扱い、売上の9割以上を法人向けが占める。そんな中、10年ほど前「地図をデザインに活用したら面白い」と、若手社員を中心に一般消費者向けに商品を売り出すアイデアが浮上。見て楽しい商品にして「地図文化」を発信しようと商品開発が始まった。

当初はマグカップなどの雑貨やクリアファイルなどの文具から展開し、東京都内の鉄道路線図をデザインしたアイテムなど、都心のものが中心だった。だが「日本中の人に地図の楽しさを知ってほしい」と、日本列島全体をデザインした「日本列島ピンバッジ」を発売。より身近な都道府県への愛着を持ってもらおうと、都道府県ピンバッジの開発に乗り出したという。

特徴は市町村境が分かる精巧な作りと、統一したサイズ感。「ゼンリンがやるからには」と全ての市町村を緻密に再現した。群馬版では東毛の自治体など面積の少ない市町村がつぶれないよう、デザイナーやメーカーと擦り合わせ、試作を繰り返した。身に着けることを前提に、全ての都道府県を20ミリ四方ほどの大きさにそろえた。

群馬県版はオンラインストアで全都道府県の中で最も早く売り切れ、最初の再販でも最速で完売した。山口さんは「これだけの反応を頂き大変ありがたい」、都丸さんも「地元群馬への愛の強さが証明された」と受け止める。山口さんはマーケティング担当として、他県のバッジについてSNSでキャンペーンをするなど周知を図っていたが、群馬県版についてはキャンペーンの必要もなかったと振り返る。

2人は「個人的な意見」とした上で群馬県版の人気の要因を、県民が義務教育の過程で経る上毛かるたに見出す。「県民なら誰でも『鶴舞う形』が分かる。認知度が高く、人気の土台になったのでは」(山口さん)、「他県では、県の形を意識することが少ない。情操教育で県の形を学び、売れる素養があった」(都丸さん)と推測する。

千葉県も人気があるといい、マスコットキャラクター「チーバ君」の影響で、県の形が「犬」に見える認識があるためと分析。「自分の県の形」を認識する機会がある県は人気が出る可能性があるとみている。

本県での思い出を尋ねると、山口さんは「高校3年間を自転車で通い、赤城おろしに立ち向かう毎日。太ももがぱんぱんになる生活だった」、都丸さんは「ゲーム『桃太郎電鉄』で群馬は(特筆する特徴のない)モブの駅で、悔しかった思いがある」と振り返る。

県民に向けて山口さんは、「(2回の売り切れで)残念な思いをした方も多いと思う。ぜひこの機会に手に入れて」、都丸さんは「今回もこぞってお買い求めいただき、群馬をまた品切れにするくらいの『県民愛』を爆発させて」と呼びかけた。

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