郷土料理「つと豆腐」伝承へ 茨城町 1日にカレー試食販売
涸沼周辺に伝わり、失われつつある郷土料理「つと豆腐」を、将来を担う子どもたちとともに引き継いでいこうと、茨城大学教育学部の調理研究室ゼミ(石島恵美子准教授)が11月に、茨城町内の小学校の家庭科授業で調理実習を行う。「初めて食べたとき、おいしさに驚いた。地元の人が気が付かない価値を示す使命を感じた」と石島准教授。つと豆腐を使った丼やカレーを、ご当地グルメとして試食販売することも計画しており、地域の食文化を次世代へ伝えようと、アイデアを練っている。
「つと豆腐」は、木綿豆腐を「わらづと」に詰め、ゆでて整形し、しょうゆとみりんで甘辛く煮付けた料理。正月や冠婚葬祭の場などで作られてきた。
わらづとで包んだ表面は樹木のような質感があり、煮ることで日持ちをよくした。わらづとで豆腐を絞る手の加減は作り手によって違い、家ごとのつと豆腐が伝承されてきた。
石島准教授は「稲作が盛んなこの地帯の生活の知恵から生まれた、栄養的にも優れた伝統的な郷土料理」と説明。「しっとりとした上品な食感で、鶏肉のようにぼそぼそせず、豆の香りと甘じょっぱさが田舎料理の郷愁を感じさせてくれる。文化的にも価値のあるおいしさ」と称賛する。
しかし、ある料理講習会で50歳以上の参加者10人にヒアリングしたところ、「町内の中高年でさえ、作ったことがない人が半分だった」という。また、県内に15年以上住む水戸市の大学生を対象に実施したアンケートで「つと豆腐」を知っていたのは、69人中1人だけで、消えつつあることが浮き彫りになったという。
そこで「絶滅しそうな郷土料理を復活させよう! 茨城町のつと豆腐」と題して、町立青葉小の5年生を対象に、11月10、11日に伝承授業を行う。
授業では、地域との関わりなどを学ぶことを目的に、郷土料理「つと豆腐」を知り、実際に自分たちで作って試食する。現代風にサラダ仕立てにしたり、涸沼の特産物を用いて「つとまぶし丼」にするなど、ご当地グルメを開発中だ。
また、同丼と「つと豆腐カレー」を、11月1日に同町小堤の町総合福祉センター・ゆうゆう館前で開く「いばらきまつり」で試食販売する計画だ。
授業を担当する同大4年の若井田萌さんは「米どころの割には独自の食文化が残っていない。つと豆腐のおいしさを通して郷土料理を小学生に伝えたい」と意気込みを見せている。
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