スマホでリプレイ、AR選手と撮影…カシマ通信網も快走

茨城新聞
2017年11月5日

J1で現在首位を走る鹿島アントラーズの本拠地、県立カシマサッカースタジアム(鹿嶋市)で、無料の高密度Wi-Fi(ワイファイ)網も快走を見せている。自分のスマートフォンを使い、観戦しながらゴールシーンを見返したり、拡張現実(AR)の選手と記念撮影できたり「試合観戦も遊びも楽しめる」と好評。2020年東京五輪サッカー会場として、観客数増加への大きなアシストになると期待が増す。

■スタジアム限定

10月、サンフレッチェ広島戦の前、スタジアム3階のコンコースはスマートフォンを手にした観客でにぎわった。一面に貼られた約50枚のポスターを専用のアプリで読み込むと、画面には選手の立体画像が出現。記念撮影やデジタルスタンプラリーを楽しんだ。

現実の空間に仮想空間を重ね合わせるAR技術を使ったもので、Wi-Fi網を活用している。ひたちなか市の平野香穂さん(23)は「試合前はスタジアムグルメを楽しんでいたが、楽しみが増えた」と笑顔で話した。

ARを活用したイベントは毎試合ではないが、7月以降はWi-Fiに接続すると、スタジアムだけで見られる「アントラーズ・ワイファイ・ポータル」サイトが毎試合利用できるようになった。選手のインタビュー動画や売店情報が閲覧できる。試合中継も無料で視聴でき、ゴールシーンを見逃してもすぐに映像をリプレイできる。

■選手目線で体感

Wi-Fi導入後初めての試合となった7月のセビリア(スペイン)戦の利用率は10%で、鹿島FCが見込んだ20%に届かなかった。

課題に挙がったのは、初期設定の複雑さ。接続するには「JリーグID」の取得が必要で、問い合わせが相次いだ。窓口機能と告知を強化すると、広島戦までの計8試合の平均利用率は18・7%に増えた。

9月の大宮アルディージャ戦のイベントでは、ロッカールームを選手目線で体験できる仮想現実(VR)映像を配信。利用率は導入後最高の25%となった。

鹿島FC事業部マーケティンググループの土倉幸司チーフは「Wi-Fiをつないだ先に何があるのか、具体的に示すことが重要」と話す。11月はリーグ戦が終盤を迎え、観客増加が見込まれる。新規イベントを企画し、利用率アップを目指す。

■五輪へ魅力向上

昨年のJリーグスタジアム観戦者調査によると、自宅からカシマスタジアムまでかかる平均アクセス時間は96・4分。リーグの中でも「遠いスタジアム」だ。地理的ハンディを克服して観客を増やすためにも、試合以外の魅力づくりが欠かせない。

インターネット環境を整備し、来年以降はイベント充実に加え、売店から座席への食事配達などをスマホでできるサービスを検討。エンターテインメント空間としての向上を目指す。

カシマスタジアムは20年東京五輪サッカー会場に決定している。土倉チーフは「3カ年計画でリノベーション(大幅改装)を図り、進化したカシマスタジアムを世界に発信したい」と力を込める。 

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